2025年4月〜5月上旬の生成AI主要ニュース:企業発表・研究・政策・著作権

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2026年10月8日改訂:2025年5月11日公開当時の記録として残しつつ、各ニュースの日付・製品名・数値を公式発表などで確認し直し、誤りや根拠を確認できない記述を修正・削除しました。本文は2025年4月1日〜5月11日ごろの出来事を対象とし、内容はその時点の情報です。対象期間より前の出来事には「背景」と付けています。

2025年4月から5月上旬にかけて、生成AI(Generative AI)をめぐる重要な発表や報道が国内外で相次ぎました。本記事では、それらをトピックごとに整理し、日付・発表者・要点をまとめます。企業の発表は「各社の説明」、報道機関が伝えた内容は「報道」として書き分け、筆者の見方は事実と分けて書きます。

日付(2025年)発表者出来事
4月3日UNCTAD技術・イノベーション報告書2025(世界の仕事の最大40%にAIが影響しうると推計)
4月4日GoogleGemini 2.5 ProがGemini APIでパブリックプレビューに
4月5日MetaLlama 4 Scout/Maverickを公開、Behemothを予告
4月9日GoogleCloud Next ’25でTPU「Ironwood」とA2Aプロトコルを発表
4月9日米議会NO FAKES Actを超党派で再提出
4月14日OpenAIGPT-4.1/mini/nanoをAPIで公開
4月14日GoogleDolphinGemmaを紹介
4月16日OpenAIo3とo4-miniを発表
4月17日GoogleGemini 2.5 Flashのプレビュー版を公開
4月22日欧州委員会汎用目的AIモデルのガイドラインに向けた意見募集を開始
4月23日米ホワイトハウス/MicrosoftAI教育に関する大統領令に署名/Microsoft 365 Copilot Wave 2春リリース
4月24日Ziff DavisOpenAIを著作権侵害などで提訴
4月25〜29日OpenAIGPT-4oの更新で迎合的な応答が問題となり、ロールバック
4月29日MetaLlamaConを開催、Llama APIとMeta AIアプリを発表
5月1日AnthropicClaudeのIntegrationsを発表
5月7日OpenAIアジアでのデータレジデンシーとOpenAI for Countriesを発表
5月8日OpenAI/PinterestDeep ResearchのGitHubコネクタ(ベータ)/Pinterestの第1四半期決算
5月上旬米上院Chip Security Actを提出
対象期間の主な出来事。日付は各発表元の表記で、主に米国時間です。

企業による新製品・新機能の発表

OpenAI(米): 4月14日、OpenAIは開発者向けAPIで「GPT-4.1」「GPT-4.1 mini」「GPT-4.1 nano」を公開しました。コーディングと指示への追従(instruction following)が改善し、最大100万トークンのコンテキストを扱えるのが特徴で、公開時の提供はAPIのみでした。同時に、API上の「GPT-4.5 Preview」を2025年7月14日に提供終了すると告知し、移行先としてGPT-4.1を勧めています。この終了告知の対象はAPI版で、当時のChatGPT上のGPT-4.5は対象外とされていました(OpenAI)。

続いて4月16日には、推論モデル「o3」と小型版「o4-mini」を発表しました。OpenAIによると、両モデルは推論モデルとして初めて、Web検索、Pythonによるファイル・データ分析、画像入力の読み取り、画像生成といったChatGPT内のすべてのツールを自律的に組み合わせて使えるモデルです。ツールをいつ・どう使うかを推論しながら、多くの場合1分以内に回答をまとめるよう訓練されたと説明されています(OpenAI)。

4月下旬から5月上旬にかけては、ChatGPTの機能追加と事業面の発表が続きました。4月28日にはChatGPT検索にショッピング機能が加わり、商品の推薦、画像、レビュー、購入先へのリンクが表示されるようになりました。OpenAIは、これは広告ではなく、購入による手数料も受け取らないと説明しています(TechCrunch)。5月7日には、日本・インド・シンガポール・韓国でのデータ保管(データレジデンシー)を、ChatGPT Enterprise/Eduの新規契約とAPIの対象顧客向けに始めると発表しました(OpenAI)。同じ日には、各国政府と組んで国内データセンターの整備や、その国向けにカスタマイズしたChatGPTの提供などを進める「OpenAI for Countries」も発表しています(OpenAI)。5月8日には、ChatGPTのDeep ResearchがGitHubリポジトリのコードや文書を参照できるGitHubコネクタを、Plus・Pro・Teamユーザー向けのベータ版として提供し始めました(TechCrunch)。

一方、4月24〜25日に配信されたGPT-4oの更新で、ChatGPTがユーザーに過度に同調・迎合する(sycophancy)応答が目立つようになりました。Sam Altman CEOがロールバックを表明し、OpenAIは4月29日に更新を元に戻したと公表しています。原因は短期的なユーザー評価に寄りすぎたことだと説明し、評価プロセスの見直しや、ユーザーが振る舞いを調整できる機能の拡充を約束しました(OpenAI)。

Google(米): Googleは4月の主な発表を、5月6日付の公式ブログでまとめています(Google)。検索では4月7日、試験提供中の「AIモード」にマルチモーダル検索が加わりました。写真を撮るかアップロードして質問すると、Googleレンズの画像検索とカスタム版Geminiを組み合わせて、関連リンク付きの回答を返す仕組みです(Google)。

4月9〜11日に米ラスベガスで開かれた「Google Cloud Next ’25」では、第7世代TPU「Ironwood」と、異なるベンダーのAIエージェント同士を連携させるオープンプロトコル「Agent2Agent(A2A)」を発表しました。GoogleはIronwoodを、これまでで最も高性能でエネルギー効率の高いTPUと説明しています。A2Aは発表時点で50社を超えるパートナーの支持を得ていました(Google Cloud)。また、米国の18歳以上の大学生向けに、Gemini Advanced、NotebookLM Plus、2TBのストレージを含む有料プラン「Google One AI Premium」を2026年春まで無料にするキャンペーンも始めました(申込期限は2025年6月30日)。

モデル面では、3月25日に試験版(Experimental)として登場していた「Gemini 2.5 Pro」(背景)が、4月4日にGemini API(Google AI Studio)でパブリックプレビューとなり、試験版より高いレート制限で使えるようになりました。Vertex AIにも順次対応しています。4月17日には「Gemini 2.5 Flash」のプレビュー版をGemini API・Vertex AI・Geminiアプリで公開しました。推論(thinking)にかける量を開発者が調整できるのが特徴です。4月8日には、Geminiアプリの調査機能「Deep Research」がGemini 2.5 Pro Experimentalで動くようになり、Gemini Advancedの加入者向けに提供されました。Googleが行った評価では、評価者が他社の主要なディープリサーチ製品よりも2対1以上の比率でこちらのレポートを好んだとされています(Google)。

一般ユーザー向けには、スマートフォンのカメラ映像や画面を見せながら会話できる「Gemini Live」のカメラ・画面共有機能を、4月中旬からAndroidのGeminiアプリ利用者全員に無料で開放しました。Gemini Liveは45以上の言語に対応しています(9to5Google)。4月30日には、アップロードした画像やAIで生成した画像を、背景の変更や物体の差し替えなどの指示で編集できる画像編集機能を、Geminiアプリで段階的に提供し始めました。生成・編集した画像には、目に見えない電子透かし「SynthID」が埋め込まれます(Google)。また4月20日(米国時間)には、米CBSの番組「60 Minutes」でGoogle DeepMindのデミス・ハサビスCEOが特集され、汎用人工知能(AGI)が5〜10年で実現しうるという見通しなどを語りました。

Meta(米): Metaは4月5日(米国時間、土曜日)、大規模言語モデルの新世代「Llama 4」から「Llama 4 Scout」と「Llama 4 Maverick」を公開し、llama.comとHugging Faceでダウンロードできるようにしました。Metaは両モデルを、テキストと画像を最初から一体で扱う「ネイティブ・マルチモーダル」モデルと説明しています。入力はテキストと画像、出力はテキストで、事前学習には動画データも使われました。Reutersの記事は音声を含めて処理できると伝えましたが、Metaの公式ブログで確認できるのはテキストと画像の入力です。Metaはあわせて、総パラメータ約2兆の「Llama 4 Behemoth」を学習中のまま予告し、ScoutやMaverickを育てる「教師モデル」と位置づけました(Meta)。

Reutersは米The Informationの報道として、開発中のLlama 4が推論や数学のベンチマークで社内の期待に届かず、人間らしい音声会話でもOpenAIのモデルに劣る懸念があったため、公開が遅れたと伝えています。これは報道ベースの情報で、Metaが公式に認めたものではありません。投資面では、Metaは2025年にAIインフラへ最大650億ドルを投じる計画でしたが(Reuters)、4月30日の第1四半期決算で、AI向けデータセンターへの追加投資などを理由に、2025年の設備投資見通しを640億〜720億ドルへ引き上げました(Meta)。

4月29日には、Meta初の開発者向けイベント「LlamaCon」を開き、限定的な無料プレビューとして「Llama API」を発表しました。Llamaを社会課題の解決に使うプロジェクトを支援する「Llama Impact Grants」の第2弾として10件に総額150万ドルを授与したことや、Llama Guard 4などのセキュリティツールも公表しています(Meta)。同じ日には、Llama 4を基にした単独の「Meta AI」アプリも公開しました(CNN)。Metaによると、Llama 4を使ったMeta AIは、WhatsApp、Messenger、InstagramのDM、meta.aiでも使えます。

その他の企業: Anthropicの「Claude」は、3月20日に米国の有料ユーザー向けにプレビュー公開していたWeb検索(背景)を、4月15日に日本とブラジルへ広げました。同じ日に、Gmail・Googleカレンダー・GoogleドキュメントとつなぐGoogle Workspace連携(有料プラン向けベータ)と、調査機能「Research」(米国・日本・ブラジルのMax・Team・Enterprise向け早期ベータ)も発表しています(Anthropic)。5月1日には、リモートのMCP(Model Context Protocol)サーバーを通じて外部のアプリやツールをClaudeにつなぐ「Integrations」を発表し、Web検索は全世界の有料プランで使えるようになったと説明しました(Anthropic)。無料プランを含む全プランへの拡大は、対象期間後の5月27日です(Anthropic)。

Microsoftは4月23日、「Microsoft 365 Copilot」のWave 2春リリースを発表しました。OpenAIの推論モデルを使う調査・分析用エージェント「Researcher」「Analyst」、資料やデータをまとめて扱う「Copilot Notebooks」、エージェントを探して使える「Agent Store」などが含まれます(Microsoft)。国内では、株式会社SUPERNOVAが生成AIサービス「Stella AI」に、OpenAIの画像生成モデル「GPT-Image-1」を4月24日から追加すると発表しました(VOIX biz)。

技術的な進展・研究成果(新モデル等)

大規模言語モデルの進化: o3とo4-miniは、回答する前に長く考える(推論する)よう訓練された、OpenAIの「oシリーズ」の最新モデルです。OpenAIは特徴として、ツールを使うかどうかと使う順序を推論の中で判断すること、そして画像を推論の過程に取り込んで読み取れることを挙げています。o4-miniは高速・低コストな推論向けの小型モデルです。OpenAIの発表では、米国の数学コンテストAIMEの2025年問題で、Pythonインタプリタを使える条件のもとpass@1で99.5%(consensus@8で100%)を記録しました(OpenAI)。これはOpenAIが自ら公表したベンチマーク値で、ツールを使わない条件の数値とは別物です。

GPT-4.1は、OpenAIのモデルとして初めて最大100万トークンの入力を扱えるシリーズです。100万トークン級のモデル自体は、GoogleのGeminiなどがそれ以前から提供していました。OpenAIは、長い文書から必要な情報を探し出す力、コーディング、指示への追従が改善したと説明し、典型的な(中央値の)問い合わせではGPT-4oより約26%安いとしています(OpenAI)。前述のとおり、API版GPT-4.5 Previewの移行先と位置づけられた一方、公開時点ではChatGPTでは使えませんでした。

オープンウェイトモデルと新アーキテクチャ: Llama 4は、Llamaシリーズとして初めてMixture-of-Experts(MoE、専門家混合)構造を採用しました。トークンごとに一部の「専門家」だけを動かすことで、総パラメータ数に比べて計算量を抑える仕組みです。Metaが公表した主な数値は次の表のとおりです。

モデル動作時パラメータエキスパート数総パラメータコンテキスト長2025年5月時点の状態
Llama 4 Scout170億(17B)161,090億(109B)1,000万トークン公開
Llama 4 Maverick170億(17B)1284,000億(400B)100万トークン公開
Llama 4 Behemoth2,880億(288B)16約2兆未公表学習中(未公開)
出典:Meta公式ブログ(2025年4月5日)とモデルカード。性能や上限はMetaの説明によります。

ライセンスは独自の「Llama 4 Community License」です。モデルの重みは無償で入手でき、商用利用もできますが、OSI(Open Source Initiative)が定めるオープンソースのライセンスではありません。たとえば、そのバージョンの公開日の前月に月間アクティブユーザーが7億人を超えていたサービスの提供者は、Metaから別途ライセンスを受ける必要があります。そのため本記事では「オープンソース」ではなく「オープンウェイト」と表記します。

マルチモーダルと専門特化AI(背景を含む): 対象期間より前の話題ですが、中国のDeepSeekは2025年1月27日、画像の理解と生成を一つのモデルで行う「Janus-Pro」(10億・70億パラメータ)を公開しています(コードはMITライセンス)。DeepSeekは、Janus-Pro-7Bがテキストから画像を生成するベンチマーク(GenEval、DPG-Bench)でDALL-E 3やStable Diffusion XLを上回ったと説明しました。ただし、これは同社が公表した特定のベンチマークでの比較です。また画像の解像度は384×384ピクセルと小さく、高解像度の画像を生成できるモデルではありません(TechCrunch)。

Googleは研究面でも発表を行いました。4月14日には、ジョージア工科大学と、野生のタイセイヨウマダライルカを長年観察してきた研究団体Wild Dolphin Projectの協力のもと、イルカの鳴き声の構造を学習し、イルカらしい音の並びを生成するAIモデル「DolphinGemma」を紹介しました。動物のコミュニケーション研究に生成AIを応用する試みです(Georgia Tech)。

4月上旬には、サイバーセキュリティ向けの実験的なモデル「Sec-Gemini v1」も発表しています。Geminiに、Google Threat IntelligenceやOSV(オープンソースの脆弱性データベース)などのほぼリアルタイムの情報を組み合わせ、インシデントの根本原因分析や脅威分析を支援するものです。Googleは「攻撃者は脆弱性を一つ見つければよいが、防御側はあらゆる脅威に備えなければならない」という非対称性を、AIで防御側を強化して縮めることを狙いに挙げています。脅威インテリジェンスのベンチマークCTI-MCQでは、他のモデルを11%以上上回ったとしています。提供は研究目的に限られ、選ばれた組織や専門家が対象でした(Google公式ブログ)。

このように2025年春は、より長大な文脈を理解する言語モデル、マルチモーダルかつ高効率なモデル、専門領域に特化したモデルなど、多方面で技術革新が進んだ時期となりました。各社とも単なる汎用チャットボットとしてだけでなく、エージェント的な振る舞い(自律的なタスク実行)やリアルタイム情報との連携を視野に入れた開発を加速させています。

政策・規制の動向

欧州連合(EU): 包括的なAI規制であるAI法(AI Act)は2024年8月1日に発効し、段階的に適用されています。当時は規定ごとに適用時期を分けた制度として案内されていました。現在の適用日や改正状況は欧州委員会の最新資料で確認してください(European Commission)。

4月22日には欧州委員会(AI Office)が、GPAIモデルのガイドラインづくりに向けた意見募集を始めました(締切は5月22日)。論点には「GPAIモデルとは何か」「さまざまなケースで誰が提供者になるか」「どのような行為が市場への提供にあたるか」などがあり、行動規範(Code of Practice)に署名した場合の扱いも説明するとしています。ガイドラインそのものに法的拘束力はありません(European Commission)。

日本: 対象期間の直前にあたる2025年3月28日、総務省と経済産業省は「AI事業者ガイドライン(第1.1版)」を公表しました。主な更新点の一つが生成AIに関する記載の拡充で、生成AIの便益とリスク、配慮すべき事項に加え、マルチモーダルな生成AI、RAG(検索拡張生成)、プログラムコードの生成などについての記述が増えています(総務省・経済産業省(PDF))。

デジタル庁は同じ3月28日から4月11日まで、「行政の進化と革新のための生成AIの調達・利活用に係るガイドライン(案)」への意見を募集しました。政府の業務で、生成AIの活用とリスク管理を一体で進めるための政府内のルールです。テキスト生成AIを組み込んだシステムを対象とし、5月をめどに運用を始める予定とされていました(デジタル庁)。改訂時注記:このガイドラインは対象期間後の2025年5月27日、デジタル社会推進会議幹事会で決定されています。

文部科学省は2024年12月26日に「初等中等教育段階における生成AIの利活用に関するガイドライン(Ver.2.0)」を公表しています(背景)。教員・児童生徒・教育委員会という利用者ごとに活用例と留意点を整理し、生成AIの出力は参考の一つであり、最後は人間が判断して責任を持つという「人間中心」の考え方を示しました(文部科学省(PDF))。総じて日本では、活用の促進とリスク対策を両立させる方向で政策が進められていました。

アメリカ合衆国: 米国に包括的なAI法はありませんが、政府・議会・州のそれぞれで動きがありました。2025年4月23日、トランプ大統領は大統領令14277「米国の若者のための人工知能教育の推進(Advancing Artificial Intelligence Education for American Youth)」に署名しました。科学技術政策局(OSTP)長官を議長とするホワイトハウスAI教育タスクフォースを設け、関係省庁に次のことを指示しています。K-12(幼稚園〜高校)のAI教育に向けた官民連携によるオンライン教材づくり、教員向けのAI研修、AI関連の見習い制度(アプレンティスシップ)や若者向け訓練の推進です。学生や教員を対象にした「大統領AIチャレンジ」の創設も盛り込まれました(ホワイトハウス)。AIリテラシーの普及とAI人材の育成を国の方針として掲げた大統領令ですが、学校でのAI教育を義務化するものではありません。

議会では2025年5月上旬、トム・コットン上院議員が「Chip Security Act」を提出しました。輸出規制の対象となる先端AIチップとその搭載製品に、所在を確認する仕組み(location verification)を導入するよう商務省に求める法案で、中国などへの不正な流出を防ぐのが狙いです(コットン上院議員の発表)。背景として、2023年7月にはホワイトハウスの呼びかけで、主要なAI企業が安全性などに関する自主的な約束を表明しています。州レベルでも、AIによる偽情報や差別的な影響への対策を定める法律の検討・施行が進んでいました。筆者の見方では、当時の米国はEUのような包括的な規制より、教育・研究の推進と個別分野の規制を組み合わせて対応していたといえます。

社会的・経済的インパクトに関する話題

産業への導入・活用状況: Thomson Reutersが4月15日に公表した「2025 Generative AI in Professional Services Report」は、法律・税務・会計・リスク管理などの専門職を対象とした調査です。組織全体で生成AIを積極的に使っているという回答は、2024年の12%から2025年の22%へとほぼ倍増しました。95%が5年以内に生成AIが自組織の業務の中心になると予想し、55%が生成AIの影響に期待や希望を感じていると答えています。一方で、投資対効果を測っている組織は20%にとどまり、52%が職場に生成AIの方針がない、64%が研修を受けていないと答えるなど、組織の体制づくりの遅れも浮かびました(Thomson Reuters)。

広告・マーケティングでは、AIの活用が業績の説明にも登場しました。Pinterestは5月8日に2025年第1四半期決算を発表し、売上高が前年同期比16%増の8億5,500万ドル、月間アクティブユーザーが過去最高の5億7,000万人になったと公表しました。第2四半期の売上高見通しは9億6,000万〜9億8,000万ドルです。ビル・レディCEOは、AIの進歩がユーザーの購買行動と広告主の成果を後押ししていると述べています(Pinterest(SEC提出資料))。一方で企業の現場では、情報漏えいなどへの懸念から試験的な導入にとどめる例も多くありました。筆者の見方では、2025年春は試験導入から本格的な業務への組み込みへ移れるかどうかの分かれ目だったといえます。

労働市場への影響: 国連貿易開発会議(UNCTAD)は2025年4月3日に「技術・イノベーション報告書2025」を公表し、世界の仕事の最大40%がAIの影響を受けうると推計しました。生産性の向上や新産業の創出という機会がある一方、低コストの労働力を強みとしてきた国では、自動化によって比較優位が失われることが懸念されるとしています。報告書は、AI市場が2033年に4.8兆ドル規模になりうると見込み、118か国(多くはグローバルサウス)がAIガバナンスの主要な国際議論に参加できていないと指摘しました。そのうえで、包摂的なAI戦略と人への投資を各国に求めています(UN Geneva)。人手不足が続く日本では、AIによる業務の効率化で人手不足を補えるとの期待もあり、影響は国や職種によって異なると考えられます。

教育への導入・対応: 前述の米国大統領令に表れているように、教育現場でも生成AIとの付き合い方が模索されています。背景として、ニューヨーク市の公立学校は2023年1月にChatGPTの利用を禁止しましたが、同年5月にこの方針を撤回し、活用を探る姿勢に転じました(District Administration)。日本では前述の文部科学省のガイドラインが、教員の校務での活用や、児童生徒が使う場合の留意点を整理しています。教育分野では、一人ひとりに合わせた学習(個別最適化)への期待と、考える力の低下や不正利用への懸念が並んでおり、各国で模索が続いていました。

著作権・倫理をめぐる議論の進展

著作権問題: 生成AIの学習に既存のコンテンツを使うことをめぐり、権利者とAI企業の対立が続きました。2025年4月24日、CNET、PCMag、IGN、Mashableなどを運営する米デジタルメディア企業Ziff Davisが、OpenAIを相手取ってデラウェア州の連邦地裁に提訴しました。訴状は、OpenAIがZiff Davisの記事を「意図的かつ執拗に」複製し、モデルの学習やChatGPTの回答に使ったと主張しています。robots.txtでクローラーによる収集を拒否していたのに使われたとして、著作権侵害、DMCA(デジタルミレニアム著作権法)違反、商標の希釈化などを訴えました(Bloomberg Law)。

同じような訴訟は以前から続いています(背景)。2023年7月にはコメディアンで作家のサラ・シルバーマン氏らがOpenAIとMetaを相手に集団訴訟を起こし(Bloomberg Law)、2023年12月にはニューヨーク・タイムズがOpenAIとMicrosoftを訴えました(Bloomberg Law)。ダウ・ジョーンズとニューヨーク・ポストが2024年10月に訴えた相手は、OpenAIではなくPerplexity AIです(The Washington Times)。OpenAIは、公開されているインターネット上の資料で学習させることはフェアユース(公正利用)にあたると主張しており、司法の判断が注目されていました。

AI生成物の著作権: 米国では、AIシステムを著作者として登録を申請した「Thaler v. Perlmutter」事件で、2023年8月に連邦地裁が、人間の著作者がいないことを理由とする登録拒絶を支持しました。2025年3月18日には、連邦控訴裁判所(D.C.巡回区)もこの判断を支持しています。ただし判決は「AIそのものを著作者にできるか」についてのもので、人間がAIを使って作った作品がどこまで保護されるかは、個別の事情で判断される課題として残っています(Skadden)。米著作権局も、Midjourneyで生成した画像を含む漫画「Zarya of the Dawn」(2023年)で、AIが生成した部分を保護の対象から外す判断を示しています。

人の声や姿を無断で使うことについては、デジタルレプリカを規制する「NO FAKES Act」が2025年4月9日に上下両院で超党派により再提出され、音楽業界やOpenAI・Googleなどが支持を表明しました。2025年5月時点では成立していません(Klobuchar上院議員)。

クリエイターコミュニティの動き(背景): 対象期間より前の2024年4月、米国のArtist Rights Allianceが、ビリー・アイリッシュ、ニッキー・ミナージュ、R.E.M.など200組以上のアーティストが署名した公開書簡を発表しました。書簡は、プロのアーティストの声や姿を盗み、創作者の権利を侵害し、音楽の生態系を壊すような「AIの略奪的な利用」から守る必要があると訴えています。そのうえでAI開発者などに、人間の創作を損なったり置き換えたりするAI音楽生成ツールを開発・提供しないと誓約するよう求めました(Euronews)。

日本では、文化審議会著作権分科会法制度小委員会が2023年7月から審議を重ね、2024年3月15日付で「AIと著作権に関する考え方について」を取りまとめています。AIの開発・学習段階、生成・利用段階、AI生成物が著作物にあたるか、という観点から現行の著作権法の適用を整理したもので、法的拘束力はありません(カレントアウェアネス・ポータル)。イラストレーターや声優などからは、作風や声を無断で模倣されることへの懸念が続けて表明されていました。

AI倫理と安全性: 偏り(バイアス)の低減や、誤情報・悪用の防止をめぐる取り組みも続いていました。背景として、2024年5月21日のAIソウル・サミットでは、OpenAI、Google、Anthropic、Meta、Microsoftなど16社が「フロンティアAI安全性コミットメント」に合意しています。リスクを十分に抑えられない場合はモデルを開発・公開しないことなどを、各社が自主的に約束したものです(英国政府)。2025年4月のGPT-4o更新をめぐる問題は、ユーザーへの過度な迎合のように、性能とは別の「振る舞いの質」が利用者の安全に関わることを示す例として注目されました。

日本では、2024年2月14日に情報処理推進機構(IPA)の中に政府の「AIセーフティ・インスティテュート(J-AISI)」が設立されています。J-AISIは2024年9月に「AIセーフティに関するレッドチーミング手法ガイド」を公表し、RAGを組み込んだシステムでの実施例などを加えて2025年3月末に改訂しました(J-AISI)。

以上、2025年4月から5月上旬にかけての生成AIの主な出来事を振り返りました。モデル開発の競争が激しくなる一方で、A2AやMCPのように企業の枠を超えてAIをつなぐ仕組みづくりも進みました。社会への浸透に、法制度や倫理面の対応が追いつこうとしていた時期だったといえます。ここに書いた製品の提供条件や規制の状況は2025年5月時点のもので、その後変わっている可能性があります。

参考資料

本文で参照した主な一次資料と報道です。

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