OpenAI「Operator」とは:2025年1月23日発表のブラウザ操作AIエージェントの仕組み・安全策・限界

OpenAIの新AI「Operator」がWebブラウザを自律的に操作する様子を示す概念図 ChatGPT
OpenAIが発表したOperatorは、APIを必要とせずにWebブラウザを直接操作できるAIエージェント

2026年10月8日改訂:この記事は、OpenAIが2025年1月23日(米国時間)に研究プレビューとして公開した「Operator」について、発表当時の内容を記録したものです。能力・ベンチマーク・提携先の記述は発表時の公式情報の範囲に絞り、根拠を確認できなかった数値や表現は削除しました。Operatorはその後ChatGPT agentに統合され、単独のサービスとしての提供は終了しています(経過は「8.」で説明します)。

1. Operatorとは何か?

Operatorは、OpenAIが2025年1月23日に研究プレビューとして公開したAIエージェントです。専用のブラウザでWebページを画面として見て、文字の入力・クリック・スクロールを行い、ユーザーの代わりにWeb上の作業を進めるよう作られていました。それまでのチャットAIが主に文章で答えを返していたのに対し、ブラウザ操作という「行動」にまで踏み込んだ点が、発表時の大きな特徴でした。

最初に使えたのは、米国のChatGPT Proプラン(当時は月額200ドル)の利用者だけで、operator.chatgpt.com から利用する形でした。この料金・地域の条件は2025年1月時点のもので、現在の契約条件ではありません。

1.1 発表時に示された特徴

OpenAIの発表から読み取れる、発表時点の主な特徴は次のとおりです。

  • 専用APIに頼らない操作:サイトごとの連携APIではなく、人間向けの画面(ボタン・メニュー・入力欄)を見て操作します。ただし、どのサイトでも確実に動くとはされておらず、複雑な画面は苦手だとOpenAI自身が認めていました。
  • 人が割り込める設計:ログイン、支払い情報の入力、CAPTCHAなどの場面ではユーザーに操作を引き継ぎます。ユーザーはいつでも操作を代われました。
  • 重要な操作の前の確認:注文の確定など影響の大きい操作の前には、ユーザーの確認を求めるとされていました。
  • 使い勝手のための機能:サイトごとのカスタム指示、よく使う依頼を保存する機能、別々の会話で複数の作業を並行して進める機能がありました。

画面を見てコンピューターを操作するAIは、Operatorが最初ではありません。Anthropicは2024年10月22日に、Claudeのcomputer use機能を開発者向けのパブリックベータとして公開していました。Operatorは、この種の機能を一般の利用者向けにブラウザ上の製品として示した、OpenAIの初期のエージェントでした。

1.2 AIエージェントとしての特性

AIエージェントとは、一般に、与えられた目標に向けて手順を自分で選びながら作業を進めるAIを指します。Operatorは、この考え方をWebブラウザの操作に当てはめた研究プレビューでした。完成した万能の代行役ではなく、重要な場面や判断に迷う場面では人に確認したり操作を戻したりすることを前提にしていた点を押さえておくと、発表内容を正しく読めます。


2. 従来のAIとの違い

2.1 対話型AIとの違い

2025年1月時点のChatGPTやGeminiなどの対話型AIは、チャット画面の中で質問に答えたり文章を作ったりする使い方が中心でした。Web検索などの機能はあっても、ユーザーの代わりにWebサイトの画面を操作して手続きを進めることは、一般向けの製品では基本的にできませんでした。

比較表:2025年1月時点の対話型AIとOperatorの違い

項目一般的な対話型AIOperator(研究プレビュー)
主な作業範囲チャット内での回答・文章作成専用ブラウザ上でのWebページ操作
得られる結果情報や文章検索・入力・カートへの追加など手続きの進行(確定前にユーザーが確認)
動き方質問ごとに応答目標に向けて「画面を見る→操作する」を繰り返す
人の関わり方回答を読み、操作は自分で行う確認・引き継ぎ・見守りを前提に任せる

2.2 既存自動化ツールとの違い

あらかじめ手順や対象の要素を定義するRPAと、画面を見て次の操作を選ぶOperatorでは、操作の組み立て方が異なります。どちらが適しているかは、手順の安定性や求める再現性によって変わります。

Operatorはサイト専用のAPIや決まった手順書に頼らず、画面のスクリーンショットを見て次の操作を決めます。そのため、レイアウトが変わったページや初めて訪れるサイトにも対応できる可能性がありました。一方でOpenAIは、スライドの作成やカレンダーの管理のような複雑な画面ではまだうまくいかないと認めていました。決まった手順を確実に繰り返したい業務では、当時もRPAやAPI連携のほうが向いていたと考えられます。


3. 発表時に示されたOperatorの主な機能

3.1 画面を見て理解する仕組み

Operatorの土台となったComputer-Using Agent(CUA)は、画面のスクリーンショットを入力として受け取り、ボタン・入力欄・メニューなどを見分けて操作します。ページのHTMLを読み取るのではなく、人が見るのと同じ画面を手がかりにする点が特徴でした。

画面から読み取る主な情報

  • 操作できる部品:ボタン、リンク、入力欄、メニュー
  • 表示内容:ページ上の文字、商品名や価格などの情報
  • 画面の配置:どこに何があり、次にどこを操作すればよいか

読み取った文字や選択した商品が正しいかは、人が画面で確認する必要があります。

3.2 自然言語理解と意図推測

Operatorへの指示は、普段の言葉で書けました。たとえば「明日の夜、2人で静かに食事できる店を予約したい」と頼むと、日時・人数・雰囲気といった条件をもとに予約サイトで候補を探す、という使い方が想定されていました(この依頼文は説明のための例で、実際に試した結果ではありません)。

ただし、曖昧な依頼では意図とずれた結果になることがあります。確定の前に確認を求めたり、判断が難しい場面でユーザーに操作を戻したりする設計は、そのためのものです。日時・人数・予算など判断に必要な条件は、最初から具体的に伝えるほうが確実です。

3.3 マルチステップタスクの実行能力

複数の手順がある依頼の進め方(考え方の例)

  1. 情報を集める:対象のサイトを開いて候補を探す
  2. 条件と照らし合わせる:依頼の条件に合うかを画面で確認する
  3. 手続きを進める:入力やカートへの追加などを行う
  4. 確定前に確認する:注文・予約の確定前にユーザーの確認を求める
  5. 結果を伝える:完了した内容、または止まった理由を報告する

旅行の手配のように複数のサイトをまたぐ作業も、原理としてはこの流れの繰り返しです。ただし発表時点のOperatorは長く複雑な作業を苦手としており、OpenAIもより長いワークフローへの対応を今後の課題としていました。航空券から宿泊、現地での予約までを一度に任せられると示されたわけではありません。


4. 発表時に想定された使い方

4.1 日常のWeb作業

OpenAIは発表時、食料品の注文、レストランの予約、チケットの購入、旅行の予約といった日常のWeb作業を主な用途として示していました。あわせて、DoorDash、Instacart、OpenTable、Priceline、StubHub、Thumbtack、Uberなどと協力し、各社のサイトでうまく動くことや利用規約への配慮を進めていると説明していました。公共分野では、カリフォルニア州ストックトン市との取り組みも紹介されていました。社名は発表時点のもので、これらのサービスで作業が必ず完了することを保証するものではありません。

発表時に示された用途の例

  • 食料品の注文:Instacartは、レシピに必要な食材をカートに入れるといった依頼の例を紹介していました
  • レストランの予約:予約サイトで空き状況を探し、予約の手続きを進める
  • チケット・旅行の予約:イベントや宿泊先の検索と手続き
  • 地域サービスの依頼:Thumbtackのような仲介サイトでの依頼の手続き

どの用途でも、注文や予約を確定する前にユーザーが確認する前提でした。また、過去の利用履歴から好みを自動で学習して店を選ぶといった機能は、公式発表では示されていません。好みや条件(アレルギーなど)を反映させたいときは、依頼文やサイトごとのカスタム指示で伝える形でした。

4.2 業務での利用について

発表時のOperatorは個人向けのProプランで提供された研究プレビューで、法人向けのTeam・Enterpriseプランへの提供は今後の予定とされていました。そのため、次に挙げるのは当時考えられた用途の整理であり、OpenAIが業務での実績として示したものではありません。

当時考えられた業務での用途

  • 出張・会議の準備:候補の検索や入力の下準備(確定は人が確認する)
  • 情報収集:公開されているWebページからの情報集め
  • 定型的な入力:Webフォームへの転記など、手順が単純な作業

一方でOpenAIは、銀行取引のような機微なタスクや、採用の判断のように重大な判断を伴うタスクは断るよう訓練したと説明していました。候補者の選考などを人の確認なしにAIへ任せる使い方は、当時の設計方針とは合いません。


5. 技術仕様と基盤システム

5.1 Computer-Using Agent(CUA)とは

Operatorを動かしていたのは、Computer-Using Agent(CUA)というモデルです。OpenAIの説明によると、CUAはGPT-4oの画像を理解する力に、強化学習(試行と評価を繰り返して望ましい行動を身につけさせる手法)で鍛えた推論の力を組み合わせ、画面上のボタン・メニュー・入力欄を操作するよう訓練されていました。

発表時に説明された特徴

  • 画面の画像を入力にする:OSやサイトごとの専用APIを使わない
  • 仮想のマウス・キーボードで操作する:クリック、入力、スクロールなど
  • 操作の前に考える:次の一手を推論してから実行し、つまずいたときは修正を試みる
  • 人に操作を戻す:解決できない場面や機密情報の入力ではユーザーに制御を戻す

5.2 処理の流れ

OpenAIの説明では、CUAは3つの段階を繰り返して作業を進めます。まず、いまの画面のスクリーンショットをモデルの入力に加えます(知覚)。次に、それまでの画面と操作の流れを踏まえて次の一手を考えます(推論)。最後に、クリック・入力・スクロールなどを実行します(行動)。作業が終わるか、ユーザーの入力が必要になったところで止まります。

開発者向けには、2025年3月11日に発表されたResponses APIのcomputer useツールとして、Operatorと同じCUAのモデルが研究プレビューで公開されました。モデル名はcomputer-use-previewです。


6. 安全性とセキュリティ対策

6.1 発表時の主な安全対策

AIがユーザーの代わりにWebを操作する以上、誤操作や悪用への備えが欠かせません。OpenAIは発表時、Operatorに次のような安全対策を組み込んだと説明していました。

公式に説明された主な安全対策

  • ユーザーの確認:注文の確定など、重要な操作の前に確認を求める
  • タスクの制限:銀行取引や重大な判断を伴う依頼などは断るよう訓練した
  • ウォッチモード:メールや金融サービスなど注意が必要なサイトでは、ユーザーが作業を見守ることを求める
  • プロンプトインジェクション対策:Webページに紛れ込ませた悪意のある指示を見抜いて無視するよう設計し、不審な動きを監視する仕組みも設けた

こうした対策があっても誤りがなくなるわけではなく、最終的な確認は利用者が行う前提でした。

6.2 プライバシー保護とユーザー制御

機密情報を扱う場面で中心になるのが「テイクオーバーモード」です。ログイン情報や支払い情報の入力が必要になると、Operatorはユーザーに操作を代わるよう求めます。OpenAIは、テイクオーバーモードの間にユーザーが入力した情報をOperatorは収集せず、スクリーンショットも撮らないと説明していました。

また、ユーザーは作業の途中でいつでも操作を代われました。データの扱いについては、会話のデータをモデルの学習に使わせない設定(オプトアウト)や、閲覧データと会話をまとめて削除する機能が用意されていました。


7. パフォーマンス評価と現在の限界

7.1 ベンチマーク結果

OpenAIは、CUAの性能を公開ベンチマーク(AIの能力を比べるための共通テスト)の結果で示しました。次の数値は2025年1月の発表時点のもので、OpenAIが公表した値です。

ベンチマーク測る内容CUA従来の最高値(画面操作方式)人間
OSWorldPC全体(OS・アプリ)の操作38.1%22.0%72.4%
WebArena通販サイトや掲示板などを再現したテスト用サイトでのWeb操作58.1%36.2%78.2%
WebVoyager実在する公開サイトでのWeb操作87%——

OSWorldでは人間の72.4%に対して38.1%と大きな差があり、OpenAIもCUAがまだどんな場面でも安定して動くわけではないと説明していました。ベンチマークの数値は、実際に使ったときにその割合で作業が成功するという意味ではありません。テストの環境や採点方法が、実際の利用とは違うためです。

7.2 現在の制約と改善計画

発表時、OpenAIはOperatorの弱点として、スライドの作成やカレンダーの管理のような複雑な画面の操作を挙げていました。研究プレビューという位置づけは、こうした限界を利用者のフィードバックをもとに改善していくためのものでした。

今後の改善点としては、より長く複雑な作業への対応が示されていました。速度の向上やコストの削減について、具体的な時期や計画が示されたわけではありません。


8. 発表時の展開計画と、その後の経過

8.1 発表時に示された計画

発表時にOpenAIが示した計画は、Plus・Team・Enterpriseプランへの提供拡大、ChatGPT本体への統合、CUAのAPI提供の3つでした。

8.2 その後の経過(2026年10月8日時点で確認した記録)

日付出来事
2025年1月23日米国のProユーザー向けに研究プレビューとして公開
2025年3月11日Responses APIのcomputer useツール(computer-use-preview)として、開発者向けに研究プレビューを公開
2025年5月23日ChatGPT上のOperatorのモデルをo3ベースに更新(API版はGPT-4oベースのまま)
2025年7月17日OpenAIがChatGPT agentを発表。Operatorの機能はChatGPTに統合され、operator.chatgpt.comは数週間以内に終了すると告知

発表時に計画されていたPlusプランなどへの提供は、Operator単体ではなく、ChatGPT agentという形で始まりました。現在、Operatorを独立したサービスとして、当初のプラン・地域・料金の条件で使うことはできません。後継機能の名前や提供範囲もその後変わることがあるため、最新の状況はOpenAIヘルプセンターで確認してください。

8.3 Operatorの発表が示した方向性

Operatorの発表は、AIが文章で答えるだけでなく、人の確認をはさみながらWeb上の作業を進めるという方向を、OpenAIが製品として示した出来事でした。実際、その機能は約半年後にChatGPT本体へ取り込まれています。

一方で、AIに操作を任せることには、誤操作、プロンプトインジェクション、個人情報の扱いといった技術面の課題に加えて、仕事への影響などの論点もあります。どこまで任せ、どこで人が確認するかを決めておくことが、当時も今も大切です。


9. まとめ

Operatorは、OpenAIが2025年1月23日に研究プレビューとして公開した、ブラウザを操作するAIエージェントでした。画面を見てクリックや入力を行う仕組みによって、チャットで答えるだけのAIから一歩進んだ使い方を示しました。

この記事の要点

  • 仕組み:GPT-4oの画像理解と強化学習を組み合わせたCUAが、知覚・推論・行動を繰り返す
  • 性能:OSWorld 38.1%、WebArena 58.1%、WebVoyager 87%(発表時にOpenAIが公表した値)。人間との差はまだ大きかった
  • 安全対策:重要な操作前の確認、テイクオーバーモード、タスクの制限、ウォッチモード、プロンプトインジェクション対策
  • その後:2025年7月にChatGPT agentへ統合され、単独のサービスは終了した

発表当時のOperatorは、どのサイトでも確実に動く完成品ではなく、人の確認を前提に改善を重ねていく段階のものでした。この記事は2025年1月時点の記録として読み、現在のOpenAI製品の機能や料金は公式の情報で確認してください。

参考資料