コモンズAI(QommonsAI)とは?約1,050自治体が使う行政特化の生成AIを、導入理由・モデル・料金・ChatGPTとの違いまで解説

コモンズAIとは?自治体の生成AIをひとつの基盤に AI入門

はじめに: 「使いたいのに使えない」が自治体では起きていました

生成AIで文章作成が楽になる、という話はもう珍しくありません。ところが自治体の現場では、使いたい気持ちがあっても、民間企業にはない事情で手が止まってきました。

  • 予算の壁: 1円でも支出するなら予算要求と調達手続きが必要で、使い始められるのは早くても来年度になります
  • ネットワークの壁: ふだんの業務端末はLGWAN(エルジーワン。自治体同士をつなぐ閉じたネットワーク)側にあり、インターネット上のAIサービスに届きません
  • 説明責任の壁: 入力したデータがどこで処理され、どの国の法律が及ぶのかを説明できないと、庁内の合意が取れません

総務省の最新調査でも、導入の課題は「AI生成物の正確性への懸念」「人材の不足」「機密情報流出の懸念」の順に多く挙がっています。

この3つの壁をまとめて外しにきたのが、最近よく名前を聞く「コモンズAI」です。まずは次の図で、壁と解消方法の対応を眺めてみてください。上段の壁が1つずつ強調され、下段の解消方法へつながります。

自治体の生成AI導入を止めてきた3つの壁と、QommonsAIでの解消方法の対応図。予算の壁には1,000人まで無料、ネットワークの壁にはLGWANから利用可、説明責任の壁には国内リージョン対応が対応する

図1: 3つの壁は、それぞれ「無料枠」「LGWAN-ASP対応」「国内リージョン」で解消されます(静止画で見る

この記事でわかること

  • コモンズAIの正体と、どれくらい広がっているのか
  • なぜ自治体で導入が進んでいるのか
  • 使えるモデルと料金プラン
  • 1,000アカウント無料の裏側(Polimillの収益構造)
  • ChatGPT・Claude・Geminiとの違いと使い分け
  • これから導入したい人の進め方と、契約前の確認事項

想定読者は、自治体のDX・情報政策の担当者、自治体向けにサービスを提供している事業者、行政のAI活用に関心のあるエンジニアの方です。前提知識は不要です。

なお、本記事は2026年9月20日時点の公開情報をもとにしています。導入数などの数値の多くは提供元の発表ベースである点にご注意ください。

コモンズAIの正体は「モデル」ではなく「行政向けの土台」

正式名称は「QommonsAI」で、頭文字はCではなくQです。開発・提供・運用はPolimill(ポリミル)株式会社で、法律・政策・論文・自治体事例など数千万件以上のデータをもとに、根拠を示しながら自治体の課題解決を支援する行政向け生成AIと説明されています。

同社はもともと、市民が政治や社会について意見を交わす「Surfvote」というサービスから出発しました。自治体と関わるなかで、職員が日々の業務に追われて住民の声を政策に反映する余裕がないという課題を目の当たりにし、まず行政の仕事そのものを効率化しようと、2024年10月にQommonsAIをリリースしています。

ここで最初に押さえておきたいのは、コモンズAIは独自のLLM(大規模言語モデル。文章を理解・生成するAIの頭脳部分)ではない、という点です。GPT、Claude、Gemini、PLaMoといった各社のモデルを束ね、その上に行政ナレッジ、庁内文書を読ませる仕組み、ガバナンス機能を重ねた「土台」です。次の図で、質問が回答になって戻ってくるまでの流れを番号順に追えます。

QommonsAIの全体像。職員の端末からの質問をQommonsAIが受け取り、行政ナレッジやガバナンス機能を通したうえで、OpenAI・Anthropic・Google・Preferred Networksのモデルを選んで推論し、出典付きの回答を端末へ返す

図2: 1の質問から5の回答まで、QommonsAIが各社モデルとの間に入ります。ChatGPTなどとの違いは、すべてこの構造から来ています(静止画で見る

どれくらい広がっているのか

同社の発表を時系列に並べると、伸びの速さがわかります。次の図は、発表があった時点ごとの導入自治体数です。

QommonsAI導入自治体数の推移を示す棒グラフ。2025年8月の約300から、2026年1月に約650、3月に750以上、5月に800以上、7月に約1,000、8月末に約1,050へ増加

図3: 1年でおよそ3.5倍。2026年8月末の約1,050自治体・約55万人という数字は、OpenAIの導入事例記事で紹介されたものです

全国の自治体は都道府県47団体と市区町村1,741団体の合計1,788団体なので、単純計算では6割弱にあたります。

ただし、この数字は条件ごと読む必要があります。

  • 「シェアNo.1」という表現は同社調べで、他サービスと抱き合わせになっていない単体プロダクトに限った話です
  • 導入数は同社の発表ベースで、利用実態について独立した検証はまだない、という指摘も海外メディアから出ています
  • 無料で始められるぶん、アカウントを作っただけの自治体も含まれ得ます。実力を知りたいなら、周辺自治体に「月あたり何人が実際に使っているか」を聞くのが確実です

一方で、第三者のデータによる裏付けもあります。総務省の令和7年度調査(2025年10月31日時点)では、自治体が導入しているサービスの上位4つが「QommonsAI」「LoGoAIアシスタント」「自治体AI zevo」「exaBase生成AI for 自治体」で、いずれも自治体専用のサービスでした。前年の調査ではChatGPTの無料版が2位に入っていたので、汎用AIから行政専用AIへの移行が進んでいることが読み取れます。

なぜ自治体で導入されているのか: 5つの理由

理由1: 予算措置なしで始められる

1自治体あたり1,000アカウントまで無料で、初期費用や構築費用もかかりません。公式も「無料だから予算化の前段階でも導入可能」と明言しています。

総務省調査では、都道府県と指定都市の導入率は100%に達した一方、その他の市区町村は45.6%にとどまっています。小規模な自治体ほど予算と人材がボトルネックになりますが、職員1,000人以下であれば全職員分が無料枠に収まります。

理由2: LGWANからそのまま使える

2026年4月からLGWAN-ASP接続(LGWAN上でサービスを提供するための正式な接続方式)に対応しました。LGWAN接続系の端末からも、専用ソフトのインストールなしに、Edge・Chrome・Firefoxのブラウザで使えます。しかもLGWAN利用に伴う追加費用はありません。

これが現場でどう効くのかを、次の図で比べてみてください。上段の印が3回移動するのに対し、下段は1回で済みます。

LGWAN対応の前後比較。これまではLGWAN接続系端末からインターネット接続系の環境に切り替え、クラウドの生成AIに質問し、回答を業務側へ持ち帰る3段階が必要だった。LGWAN-ASP対応後は、LGWAN接続系端末からLGWAN-ASP経由でQommonsAIを直接利用できる

図4: 環境の切り替えと持ち帰りの往復がなくなります。この手間の差が、定着するかどうかを分けます(静止画で見る

理由3: 国内リージョンを選べて、説明がしやすい

リージョンとは、クラウドのデータセンターが置かれている地域のことです。QommonsAIでは12モデル中7モデルが国内リージョンで稼働し、利用者は国内か海外かを画面で確認しながらモデルを選べます。管理者がリージョンを制限することもでき、国内リージョンを選んだ場合は日本国に裁判管轄権が帰属すると説明されています。

エンジニア目線で補足すると、基盤はAWSの国内リージョン上にあり、GPT-5.4はAzure OpenAI Serviceの国内リージョンから提供されているため、構成としてはマルチクラウドと読めます。同社が国内処理の根拠として挙げる「JP CRIS」は、おそらくAmazon Bedrockの日本国内クロスリージョン推論(東京・大阪の間で推論を完結させる仕組み)を指していると考えられます。

セキュリティ面では、ISMAP(政府情報システムのためのセキュリティ評価制度)のクラウドサービスリストに登録されたAWS上で稼働し、保存データのAES-256暗号化と、テナント間の論理隔離を行っているとのことです。なお、この書き方は基盤であるAWSの登録を指していると読めるため、QommonsAI自体の登録状況が要件になる場合は個別に確認してください。

理由4: 行政ナレッジが最初から入っている

個人的には、ここがいちばんの本質だと考えています。

中央省庁の政策文書・通知・審議会資料、全47都道府県と全国の市区町村の議会議事録や行政計画などを、Polimillが独自に収集して自動更新しています。自治体側の運用負荷はゼロで、導入初日から数千万件以上の行政文書を横断検索できます。

法令については、独自開発の「LawChunker」で条文の階層構造や参照関係を扱い、法令検索精度は98%としています(同社の公表値)。自治体名を選ぶだけでその自治体に詳しいAIになる、という使い勝手も、このデータ基盤の上に成り立っています。

OpenAIの事例記事でも強調されているのはモデルの性能ではなく、全国の議会議事録を集めて形式をそろえ、AIで付加情報を付けて、自治体や時期をまたいで検索できる基盤を作った点でした。RAG(検索拡張生成。AIに手元の資料を参照させて答えさせる仕組み)を自前で組んだことがある方なら、データの収集と整形を全国規模で肩代わりしてもらえる価値は想像しやすいはずです。

理由5: 管理者が安心できる機能と、無料の研修

「使わせたいが、漏らさせたくない」という管理者の不安に対しては、次の機能が用意されています。

  • 氏名・住所・マイナンバーなどを自動で検知して警告・ブロックする機能
  • 管理者が100個以上設定できる禁止ワード
  • 検知の全履歴を確認できるログ
  • 利用回数・部署別の活用状況・推定削減時間を見える化する効果測定ダッシュボード
  • 入出力ログのCSV出力と月次レポートの自動生成

議会報告や予算要求にそのまま使える数字が出せるのは、行政向けならではの作りです。

加えて、代理店を介さない直販体制で、導入先の全自治体に対して現地での導入研修と初級・中級研修を無償で実施しています。総務省調査でも、人材確保の取り組みとして「職員の育成(研修会の開催など)」が初めて最多になっており、時流と噛み合っています。

使用できるモデル

OpenAI、Anthropic、Google、Preferred Networksの4社から厳選した12モデルを搭載しています。公開情報で名前を確認できたものは次のとおりです。

提供元モデル補足
OpenAIGPT-5.4国内リージョン(Azure OpenAI Service)
OpenAIGPT-5.4 mini国外リージョン
AnthropicClaude Opus 4.6 / Claude Sonnet 4.6マルチモーダル対応
AnthropicClaude Haiku 4.5国内リージョン
GoogleGemini 3.1 Proマルチモーダル対応
GoogleGemini 2.5 Pro国内リージョン
GoogleGemini 3.5 Flash2026年6月にGemini 3 Flashから更新
Preferred NetworksPLaMo 2.2 Prime純国産LLM
画像生成Nano Banana 2 / Nano Banana Pro / GPT Image 1.5広報ポスターやチラシの素案向け

12モデルは、業務の複雑さに応じて「フロンティア(高度な推論・分析)」「標準(文書作成・情報整理の主力)」「高速(日常業務・即時応答)」の3クラスに分類されています。さらに、同じ会話の中で文脈を保ったままモデルを切り替える「AIリレー」という機能があります。次の図は、高速モデルで概要を整理してから、フロンティアモデルで深く分析する流れです。

3つのクラスとAIリレーの図。高速・標準・フロンティアの3クラスがあり、同じ会話の中で高速モデルによる概要整理からフロンティアモデルによる深い分析へ、文脈を保ったまま切り替える

図5: 最初から高性能モデルを使うのではなく、段階に応じて切り替えるのがAIリレーの考え方です(静止画で見る

モデルの更新が速いのも特徴です。

  • 2025年8月: GPT-5、Gemini 2.5 Flash、Claude 3.7 Sonnet、PLaMo 2.0 Prime
  • 2025年末: GPT-5.2、Claude 4.5系、Gemini 3 Pro、PLaMo 2.1 Prime
  • 2026年春: Claude Opus 4.6を公開から1週間以内に、Claude Sonnet 4.6をその3日後に搭載

ちなみに、日常業務の一般会話で最も選ばれているのはGPTモデルだそうです。ChatGPTの知名度が、職員が新しいツールを使い始めるときの心理的なハードルを下げている、という説明には納得感があります。

注意点として、2026年7月にはGPT-5.6やClaude Opus 5が登場していますが、6月以降のQommonsAI側のモデル更新は今回の調査では確認できませんでした。最新のラインナップは公式サイトで確認してください。

料金プラン

2026年1月9日から始まった新料金は、人数で区切る「階段」型です。次の図で、職員数ごとの月額を確認できます。3つの例が順番に強調されます。

QommonsAIの料金を示す階段グラフ。1,000アカウントまで無料で、以降は1,000アカウントごとに月額1万円ずつ上がる。職員800人なら月額0円、3,900人なら月額3万円、8,000人なら月額7万円

図6: 職員8,000人の規模でも月額7万円。使った量ではなく人数で決まるので、年度当初に予算が読めます(静止画で見る

アカウント数月額
1〜1,000無料
1,001〜2,0001万円
2,001〜3,0002万円
以降1,000アカウントごとに1万円追加(端数切り上げ)

初期費用・構築費用は不要、トークン数(AIが扱う文字量の単位)は無制限、LGWAN環境でも同一料金です。学校などを含む公的機関も、それぞれ1,000人まで無料の対象とされています。

補足が3点あります。

  • GPT-5.4については「自治体あたり月間3億トークンを無償提供」という表現になっています。1月発表の「トークン無制限」との関係は、導入時に確認しておくと安心です
  • RAG用のストレージは、基礎自治体に100GB、広域自治体に300GBが無料で付きます
  • 有償プランでは、外部データ連携や、きわめて専門性の高いAIが使えます。無償プランの利用中でも、有料オプションを個別に申し込めます

「なぜここまで無料にできるのか」は多くの方が気になるところだと思うので、次のコラムで掘り下げます。

コラム: 1,000アカウント無料で、Polimillはどこで収益を得ているのか

「タダより高いものはない」と身構える方も多いと思います。ここでは、公表されている事実と筆者の推測を分けながら、無料提供の裏側を整理します。

先に結論をお伝えすると、現時点では利用料で無料提供を維持しているのではなく、調達した資金で無料提供を先行させ、後からエコシステムで回収する設計です。今は投資フェーズで、無料提供そのものが黒字で回っているわけではない、と見るのが妥当でしょう。

会社が公式に説明していること

Polimillは2026年1月のシリーズAで、総額約6億3,500万円を調達しました。内訳は、ベンチャーキャピタルから5億2,000万円、経営陣・エンジェル投資家から約1,500万円、メガバンクからの融資が1億円で、調達後の企業評価額は約50億円です。

同社は、QommonsAIでは利用料での収益を求めていないと明言しています。それでも約50億円の評価がついた理由は、QommonsAIが単なる生成AIサービスではなく、行政DXエコシステムの共通基盤だからだ、という説明です。

調達資金の使い道として挙げられているのは、次の5つです。

  • MCPアプリストア「Qommons ONE」の開発とパートナー企業の拡大
  • 2026年内に1,200自治体・80万ユーザーへ広げるための営業・サポート体制の強化
  • QommonsAI Pro、Qommons Connect、QommonsAI Advanceの研究開発
  • GraphRAG(情報同士のつながりをたどって検索する仕組み)と行政データの共通化基盤への技術投資
  • ヒューマノイドロボットの公共導入の実証

想定される5つの収益源

公表されている情報と筆者の想定を、確度を分けて並べます。

収益源わかっていること確度
1,001アカウント以上の人数課金1,000人ごとに月額1万円。職員8,000人でも年84万円なので、規模は小さめです公表済み
有償オプション外部データ連携や専門性の高いAIを、無料プランの上に個別に追加できます。価格は非公表です存在は公表済み
Qommons ONE(アプリストア)企業のデータやアプリを自治体職員に届ける「販路」です。審査項目にアプリの料金体系の妥当性が含まれるため、有料アプリが前提と読めます。Polimillの取り分は非公表です仕組みは公表、収益の形は筆者の想定
Qommons Connect自治体の課題と企業の解決策をAIでつなぐサービスです。対価の設計は非公表です筆者の想定
企業・個人向け版行政ナレッジや法令AIを民間向けに案内するページがあります。料金は未確認です存在は確認済み

本命と目されるのはQommons ONEです。ここで面白いのは、お金の出どころが自治体だけではなくなる点です。

自治体向けの営業は、入札や関係づくりのコストが非常に高いことで知られています。約1,050自治体の職員の画面に直接アプリを並べられる経路には、企業の側に対価を払う理由があります。アプリストアや広告媒体に近い、いわゆる二面市場(利用者と事業者の両方を集め、両者をつなぐことで価値を生む事業モデル)の設計です。

ただし、誰がいくら払うのかは公表されていません。次の図では、公表されている流れを実線、筆者の想定を点線で描き分けています。1の資金調達から4の回収まで、番号順に強調されます。

無料提供を支えるお金の流れの図。投資家・銀行からPolimillへ約6.35億円の資金が入り、Polimillは自治体へQommonsAIを無料で提供する。企業はアプリストアQommons ONEにアプリで参加し、アプリが自治体職員の画面に並ぶ。Polimillへの対価は、自治体からの人数課金・有償オプションが実線、企業からの手数料などが点線(筆者の想定)で示されている

図7: 先に資金で利用者を広げ、後から企業側も含めて回収する順番です。点線の部分はまだ公表も実証もされていません(静止画で見る

原価はどの程度か(筆者の試算)

ここは公開情報がないため、仮定を置いた試算です。実数ではない点にご注意ください。

項目仮定と結果
月間アクティブ約55万アカウントの3割として、約16.5万人
1人あたりの利用月100リクエスト、1回平均3,000トークン(参照する行政文書の分を含む)
月間トークン数約500億トークン
平均単価100万トークンあたり1〜3ドル(軽量モデルと高性能モデルの混在を想定)
API原価月5万〜15万ドル。1ドル150円で換算すると、年間およそ1億〜3億円

この試算が大きく外れていなければ、API原価だけなら調達額で数年分を賄える水準です。GPT-5.4に「自治体あたり月間3億トークン」という枠が設けられているのも、高性能モデルの原価を青天井にしないための上限と読めます。

むしろ重いのは人件費のはずです。全国の自治体への現地研修を、直販で、しかも無償で続けています。同社のニュース欄には、ほぼ毎営業日のペースで各地の研修レポートが並んでいます。研修チームと営業の固定費が、API原価を上回っている可能性は高いと見ています。

なお、スタートアップ向けのクラウド利用クレジットやボリュームディスカウントによって、実際の単価が定価より下がっている可能性もありますが、これは推測の域を出ません。

利用する側はどう受け止めればよいか

  • 追い風: 同じ性能あたりのトークン単価は下がる傾向にあり、軽量モデルで足りる業務が増えるほど原価は縮みます。無料で先に利用者を広げる戦略とは相性の良い構造です。一方で、最上位モデルの単価はむしろ上がる場面もあるため、高性能モデルがどれだけ使われるか次第という面は残ります
  • リスク: Qommons ONEは、ロードマップ上2026年6月に正式版、秋以降に本格展開という段階で、エコシステムの収益はまだ実証されていません。立ち上がらなければ、追加の資金調達か料金改定のどちらかになるはずです
  • 利用者側の備え: 無料のうちに試す価値は高い一方で、価格改定の予告期間とデータの持ち出し方法を契約時に確認しておくことが大切です。後ほどの「導入前に知っておきたい注意点」の表にも入れています

ChatGPT・Claude・Geminiとの違い

「コモンズAIとClaudeはどちらが良いのか」と迷う方もいると思いますが、この比較はそもそも成り立ちません。図2で見たとおり、コモンズAIの中でClaudeやGPTを選んで使うからです。比べるべきは、「行政向けに作り込まれた土台を経由して使うか」「モデルの開発元と直接契約して使うか」です。

観点QommonsAIChatGPT / Claude / Gemini(直接契約)
位置づけ複数社のLLMを束ねた行政向け基盤モデル開発元が直接提供するサービス
使えるモデル4社12モデルを切り替え原則として自社モデルのみ
行政ナレッジ省庁・都道府県・市区町村の文書を標準搭載自前でRAGや検索を組む必要あり
ネットワークLGWAN-ASP対応インターネット接続が前提
データの所在国内リージョンを選択でき、管理者が制御可能プランと契約条件による
課金単位団体単位。1,000アカウントまで無料1人あたり月額数千円が目安
管理機能個人情報検知、禁止ワード、ログ、効果測定法人プランにあるが行政特化ではない
最新機能検証後に順次搭載最も早く使える
主な対象自治体・公的機関誰でも

では、どちらを選べばよいのでしょうか。次の図は判断の流れです。まず自治体で併用に至る例、続いて自治体以外の例の順に、経路が強調されます。

QommonsAIと汎用AIのどちらを選ぶかの判断フロー。自治体・公的機関でなければ汎用AIの契約、自治体で全職員に配りたいかLGWANから使いたい場合はQommonsAIを土台にし、さらに一部の部門で最新機能を深く使いたい場合は汎用AIを併用する

図8: 全職員への配布はQommonsAI、特定部門の深掘りは汎用AI、という併用が現実的な着地点です(静止画で見る

文章で整理すると次のようになります。

  • 全職員に配って、あいさつ文、議事録の要約、議会の想定問答といった文章業務を底上げしたいなら、QommonsAIが合理的です。総務省調査でも、自治体の活用事例の上位はまさにこの3つでした
  • エージェント機能、コーディング支援、各種サービスとの連携など、開発元が最速で出してくる機能を企画部門や情報部門が深く使いたいなら、汎用AIの法人契約が向いています
  • 第三者のレビューでも、文書作成の土台をQommonsAIで全職員に配り、企画部門だけ汎用AIを持つ併用が現実的だとされています

導入前に知っておきたい注意点

良い話ばかりではありません。第三者の検証記事が挙げる弱点は、製品そのものよりも体制と競合環境に集中しています。

  • 直販中心のため、日常的に顔を出してくれる地元ベンダーがいません
  • 導入自治体が増え続けるなかで、無料研修の供給が追いつくかは不透明です
  • 基幹系システムのベンダーが無償で載せてくる生成AI機能と、役割が重複するおそれがあります

3つめは製品の優劣ではなく庁内調整の問題になるので、やっかいです。「文書作成はQommonsAI、システム内の検索は基幹ベンダー側」のように、業務単位で線を引いてから導入することをおすすめします。

契約前に確認しておきたい項目を表にまとめました。

確認項目なぜ聞くのか
無料枠の保証期間と、価格改定の予告期間無料の持続性はエコシステムの成否に左右されるため
入力データの学習利用の有無、ログの保存期間と保存場所庁内のセキュリティポリシーと照合するため
解約時のデータ持ち出し形式庁内文書を大量に入れた後は、乗り換えが難しくなるため
自庁のネットワーク構成でLGWAN接続が通るか三層分離の構成は自治体ごとに異なるため
研修の実施時期・回数・オンライン可否導入時期と研修時期がずれると定着しにくいため
障害時の連絡先と復旧目標時間業務に組み込むほど、止まったときの影響が大きくなるため

無料は導入のハードルを下げますが、庁内文書を大量に入れた後の離脱コストは上げます。出口は先に確認しておきましょう。

もう1つ、AIの効果にも限界があります。Polimill自身の検証でも、経験の浅い職員がAIを使って作った政策提案はベテランに近い評価を得たものの、最高評価はやはりベテランの提案でした。差は、マニュアルに書かれていない実務上の判断、つまり暗黙知にあったと分析されています。AIを配れば解決する、という話ではない点は覚えておきたいところです。

これから導入したい人の進め方

自治体・公的機関の場合

全体は8ステップです。次の図で、1から8まで順番に強調されます。

QommonsAI導入の8ステップ。資料請求・相談、庁内ルールの確認、ネットワークを決める、申し込み・管理者設定、アカウント発行、無料研修、庁内ナレッジ整備、効果測定の順に進む

図9: 申し込みの前に、庁内ルールとネットワークを決めておくのがポイントです。手順は公開情報をもとに筆者が整理した進め方の例です(静止画で見る

  1. 資料請求・相談: 公式サイト(info.qommons.ai)から資料請求またはトライアルを申し込みます。代理店を介さない直販なので、窓口はPolimillです
  2. 庁内ルールの確認: 生成AIの利用ガイドラインを確認します。策定済みの自治体は853団体で、未策定の737団体を初めて上回りました。未策定なら、総務省のガイドブックやデジタル庁のガイドラインが参考になります
  3. ネットワークを決める: インターネット接続系で使うのか、LGWAN接続系(LGWAN-ASP経由)で使うのかを決め、自庁の構成で通るかを情報部門と確認します
  4. 申し込み・管理者設定: 国内リージョンのモデルに限定するか、禁止ワードと個人情報検知をどう設定するか、スーパー管理者・管理者・メンバーの3段階の権限をどう割り当てるかを決めます
  5. アカウント発行: 職員アカウントの一括登録機能があります
  6. 無料研修: 初級編から上級編・管理職向けまで、習熟度に合わせたカリキュラムが用意されています
  7. 庁内ナレッジ整備: フォルダは最大5階層で管理でき、アップロードした文書はすぐにRAGで使えるようになります。例規集や過去の答弁集から始めるのが定石です
  8. 効果測定: ダッシュボードで利用状況を追い、使われていない部署に研修を当てます

民間企業・個人の場合

主な対象は自治体と公的機関ですが、公式サイトには企業・個人向けのページもあり、公共サービスサポートAI、e-Gov法令AI、プライベートナレッジ、QommonsAI Talkなどが案内されています。料金の詳細は公式サイトで確認してください。

自治体向けにサービスを提供している事業者の方は、外部企業がアプリを提供できる「Qommons ONE」の動向を追っておく価値があります。MCP(AIと外部サービスをつなぐ共通規格)のアプリストアという位置づけで、約1,050自治体の職員の画面に自社サービスを届ける経路になり得ます。

参加方法は2種類あります。データやAPIを提供してPolimill側がアプリ開発を担う「データ提供型」と、自社でMCPサーバーを開発・運用して接続する「MCPサーバー提供型」です。事前相談から公開までは約3か月が目安とされ、セキュリティ、品質、運用体制、料金体系の妥当性が審査されます。

よくある質問

「コモンズAI」と「QommonsAI」は別物ですか

同じサービスです。QommonsAIが正式名称で、カタカナで「コモンズAI」と表記されます。

「100アカウントまで無料」と聞いたのですが

古い情報です。2025年10月から無料枠が各自治体1,000人までに拡大され、2026年1月の新料金でも1,000アカウントまで無料とされています。以前の記事には100アカウントと書かれているものがあるので、日付を確認してください。

職員が1万人の自治体だといくらになりますか

公表されている料金の計算式に当てはめると、最初の1,000人が無料、残り9,000人分が1,000人ごとに1万円で、月額9万円になります。

無料枠がなくなる可能性はありますか

現時点で終了の予定は公表されていません。ただし、コラムで整理したとおり、無料提供は調達資金とエコシステムの収益見込みに支えられています。契約時に、価格改定の予告期間を確認しておくのが安全です。

ChatGPTを契約していれば不要ですか

目的によります。特定の部署だけが使うなら汎用AIの法人契約で足りますが、全職員に配りたい、LGWANから使いたい、行政文書を根拠として引きたい、という要件があるならQommonsAIの領域です。併用している自治体も珍しくないとされています。

まとめ

  • コモンズAIは独自モデルではなく、各社LLMの上に、行政ナレッジ、LGWAN接続、国内リージョン、ガバナンス機能を重ねた行政向けの土台です
  • 普及の理由は、予算・ネットワーク・説明責任という自治体特有の3つの壁を、無料・LGWAN対応・国内処理でまとめて外したことにあります
  • 汎用AIとは競合ではなく、層が違います。全職員への配布はコモンズAI、特定部門の深掘りは汎用AI、という併用が現実的です
  • 導入数は提供元の発表ベースで、無料の持続性はエコシステムの収益次第です。試さない理由は少ない一方で、価格改定の条件とデータの出口は契約前に確認してください

次の一歩としては、まず自庁の生成AI利用ガイドラインの有無を確認し、公式サイトから資料を取り寄せるところから始めるのがおすすめです。

参考リソース

提供元の一次情報

第三者の情報

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