確認日:2026年9月24日。Microsoft Learn(Microsoft Foundry、Foundry Models、Azure OpenAI in Foundry Models、Guardrails の各ドキュメント)、Azure の公式製品ページ・料金ページ、OpenAI の公式ドキュメントで確認しました。この記事は2025年2月に公開した「初心者向け!Azure OpenAI Serviceの概要と使いどころ徹底解説」を、現在の名称と仕組みに合わせて全面的に書き直したものです。
はじめに:この記事で分かること
「会社で ChatGPT のような AI を使いたい。でも、データの扱いが心配なので Azure で使いたい」。こうした相談で最初に名前が挙がるのが Azure OpenAI です。
ただ、2025年に旧記事を書いてから、Azure の生成AIサービスは名前も仕組みも大きく変わりました。いまは Microsoft Foundry という大きな入れ物の中で、OpenAI のモデルも、それ以外の会社のモデルも使えるようになっています。
この記事では、これから Azure で生成AIを使う方に向けて、次の順番で説明します。
- 名前の変化(Azure OpenAI Service → Azure OpenAI in Foundry Models など)
- Azure で生成AIを使うと何ができるか
- OpenAI の API を直接使う場合との違い
- 使えるモデルの種類(OpenAI 以外も含む)
- デプロイの種類と料金の考え方
- 始め方の手順と、最小のコード例
- コンテンツフィルター(Guardrails)
- 使いどころ(社内チャット、RAG など)
会社全体でのデータ管理やネットワークの閉じ方など「安全に使うための土台」は、別記事の Azure生成AIの安全なデータ管理と共通基盤(ランディングゾーン)入門 で詳しく扱っています。この記事は「まず使ってみる」側の入門です。
先に整理:名前が変わった製品
Azure の生成AIまわりは名前の変更が多く、検索すると古い名前の情報もたくさん出てきます。Microsoft Learn の「What is Microsoft Foundry?」には、旧名と現在の名前の対応表が載っています。主なものを整理します。
| 旧名 | 現在の名前 | ひとことで |
|---|---|---|
| Azure OpenAI Service | Azure OpenAI in Foundry Models | OpenAI のモデルを Azure で使うサービス。Foundry Models の一部という位置づけ |
| Azure AI Studio / Azure AI Foundry | Microsoft Foundry | モデル・エージェント・ツールをまとめて扱う Azure の AI 開発基盤 |
| Azure AI Services | Foundry Tools | 音声・翻訳・画像認識などの AI サービス群 |
| Hub + Azure OpenAI + Azure AI Services | Foundry リソース(1つ)+ プロジェクト | リソースの持ち方が1つにまとまった |
| コンテンツフィルター | Guardrails(ガードレール) | 有害な入力・出力を検知して止める仕組み |
| Azure Active Directory(Azure AD) | Microsoft Entra ID | サインインと ID の管理 |
旧記事で「Azure OpenAI Service」と書いていたものは、公式の製品ページでは現在「Azure OpenAI in Foundry Models」と呼ばれています。この記事では、分かりやすさのために「Azure OpenAI」と短く書くこともあります。
すでに Azure OpenAI のリソースを持っている場合
以前に作った「Azure OpenAI」のリソースは、そのまま使えます。公式ドキュメントでは、Azure OpenAI リソースも Foundry リソースも一般提供(GA)でサポート対象だと説明されています。
Foundry リソースにアップグレードすると、エンドポイント(接続先の URL)・API キー・ネットワーク設定などを保ったまま、OpenAI 以外のモデルやエージェント機能も使えるようになります。アップグレードは任意で、元に戻す(ロールバック)こともできます。既存の Azure OpenAI の機能の料金は変わらないと書かれています(アップグレードの公式手順)。なお、Microsoft が自動アップグレードを予定しているリソースもあるため、管理者の方は同じページから案内を確認してください。
Azure で生成AIを使うと何ができるか
いまの構成を一言でいうと、Microsoft Foundry という基盤の上で、Foundry Models のモデルを選んで使う、という形です。Azure OpenAI はその中の「OpenAI のモデル群」にあたります。
| できること | 内容 |
|---|---|
| 文章の生成・要約・翻訳 | GPT シリーズなどのチャット用モデルで、質問への回答、要約、文書の下書きなどを作る |
| 画像の読み取り・生成 | 画像を入力できるモデルや、画像を作るモデル、動画を作るモデルを使う |
| 音声 | 文字起こし(音声→文字)、読み上げ(文字→音声)、音声での対話 |
| 埋め込み(ベクトル化) | 文章を数値の並びに変換し、意味の近い文書を探す。RAG(後述)の土台 |
| エージェント | モデルに指示と道具(検索・関数呼び出しなど)を持たせ、作業を進めさせる(Foundry Agent Service) |
| 評価・監視 | 回答の品質の評価、動作の記録(トレース)、ダッシュボードでの監視(一部プレビュー) |
公式ドキュメントによると、Foundry のモデルカタログには Microsoft、OpenAI、Anthropic、Meta などの1万を超えるモデルが載っています(公式の概要)。
操作する場所は主に3つです。ブラウザーで使う Foundry ポータル(ai.azure.com)、Python などから呼ぶ SDK、そして Azure CLI などのコマンドです。「ポータルで試作してからコードに移る」という組み合わせ方が、公式ドキュメントでも例として紹介されています。
OpenAI の API を直接使う場合との違い
「OpenAI の API を直接契約するのと、Azure 経由で使うのは何が違うのか」は、いちばんよく聞かれる質問です。旧記事では「セキュリティは Azure、手軽さは OpenAI」と大まかに分けていましたが、2026年9月時点では OpenAI 側もデータ管理の選択肢を増やしているため、もう少し正確に比べます。
| 観点 | Azure(Foundry 経由) | OpenAI の API を直接 |
|---|---|---|
| 契約・請求 | Azure のサブスクリプションでまとめて請求。既存の Azure 契約に乗せられる | OpenAI と直接契約し、OpenAI から請求 |
| 学習への利用 | 入出力は OpenAI などのモデル提供元に渡らず、許可なく基盤モデルの学習に使われないと明記 | 2023年3月1日以降、API のデータは明示的にオプトインしない限り学習に使わないと明記 |
| 不正利用の監視 | 不正利用のおそれがある入出力は自動レビューの対象。必要に応じて権限のある Microsoft 社員が確認することがある | 不正利用監視のログを既定で最大30日保存 |
| 処理される場所 | デプロイの種類で選ぶ(全世界・データゾーン・指定した地域)。日本のリージョンにもリソースを作れる | データレジデンシー(保存・処理場所の指定)は承認制で、日本を含む地域を選べる |
| 使えるモデル | OpenAI のモデルに加え、他社のモデルも同じ基盤で使える | OpenAI のモデル |
表の「学習への利用」は、Azure 側は Microsoft Learn の「Data, privacy, and security for Foundry Models sold by Azure」、OpenAI 側は「Data controls in the OpenAI platform」の記載に基づきます。どちらも初期状態で学習には使わないため、「学習されるかどうか」だけで選ぶ時代ではなくなったと考えてよいでしょう。
Azure 側にある企業向けの仕組み
上の表の違いに加えて、Azure には次のような「会社で管理するための仕組み」がそろっています。ここが Azure を選ぶ一番の理由になりやすい部分です。
- SLA(稼働の保証):公式製品ページでは「Azure OpenAI は少なくとも99.9%の時間は利用可能」と保証しています。ただしデプロイの種類で条件が違い、Developer には SLA がなく、Batch はリアルタイムの SLA の対象外です。
- ID と権限:Microsoft Entra ID(旧 Azure AD)と Azure RBAC で「だれが何をできるか」を細かく決められ、API キーによる認証を無効にもできます。
- ネットワーク:プライベートエンドポイントを使い、社内ネットワークからだけ接続する構成が取れます。
- 社内ルールの強制:Azure Policy で、使えるモデルやデプロイの種類を制限できます。
- いまの環境に乗せられる:すでに Azure や Microsoft 365 を使っていれば、サインイン・請求・監視を同じ仕組みで扱えます。
注意したい点
- モデルや機能の提供時期・地域が違うことがある:同じモデルでも、使えるリージョンやデプロイの種類はモデルごとに違います。使いたいモデルが、使いたい場所で使えるかを先にリージョン別の一覧で確認しましょう。
- データの扱いの細部を確認する:会話履歴を保存する機能(Responses API など)やアップロードしたファイルは、リソースと同じ地域に保存されます。不正利用監視の変更の申請など、細かい条件は 共通基盤の記事 の「入力データは学習に使われる?」の章で整理しています。
- 最初の設定は OpenAI 直接より手順が多い:サブスクリプション、リソース、デプロイ、権限と、準備する物が増えます。
使えるモデルの種類
Foundry Models のモデルは、公式に2つの区分に分けられています(Foundry Models overview)。
| 区分 | どんなモデル | 請求・サポート |
|---|---|---|
| Foundry Models sold by Azure(Azure が販売するモデル) | Azure OpenAI のすべてのモデルと、選ばれた他社モデル(DeepSeek、Meta、Mistral、xAI の Grok、Cohere、Moonshot AI、Black Forest Labs、Microsoft の MAI など) | Azure のサブスクリプションで請求。Azure の SLA の対象で、Microsoft がサポート |
| Foundry Models from partners and community(パートナー・コミュニティのモデル) | Anthropic の Claude、Hugging Face のオープンモデルなど。カタログの大部分はこちら | Azure Marketplace 経由で請求。サポートは原則として各提供元(Claude は Microsoft サポートが窓口) |
たとえば Anthropic の Claude も Foundry で使えますが、「Azure が販売するモデル」ではなく「パートナーのモデル」に分類されています。データの扱いや利用条件も区分によって違うため、使う前にモデルごとのページを確認しましょう。
2026年9月24日時点の Azure OpenAI の主なモデル
公式のFoundry Models sold by Azureのページでは、次のような OpenAI のモデルが案内されています(一部。提供地域やプレビューかどうかはモデルごとに異なります)。
| 種類 | 主なモデル名(公式ページの表記) |
|---|---|
| 最新のチャット・推論モデル | gpt-6-astra、gpt-6-sol、gpt-6-luna、gpt-5.6-sol、gpt-5.6-terra、gpt-5.6-luna |
| よく使われる従来のモデル | gpt-5.5、gpt-5.4 系、gpt-5 系(gpt-5-mini など)、gpt-4.1 系 |
| コーディング向け | gpt-5.3-codex、gpt-5.2-codex など |
| オープンウェイト | gpt-oss |
| 埋め込み | text-embedding-3-large、text-embedding-3-small など |
| 画像・動画・音声 | 画像生成、動画生成(sora-2)、文字起こし・読み上げのモデル |
モデルは入れ替わりが早く、古いモデルは順に提供終了(リタイア)になります。最新の一覧は、必ず上の公式ページと Foundry ポータルのモデルカタログで確認してください。GPT-6 世代の違いは GPT-6 Astra と GPT-5.6 Sol・Claude・Gemini の比較記事 でまとめています。
デプロイの種類と料金の考え方
Azure でモデルを使うには、基本的にまずデプロイ(自分のリソースにモデルを配置して、呼び出せる状態にすること)をします。このときに選ぶ「デプロイの種類」で、どこで処理されるか・どう支払うか・性能の安定度が決まります(Deployment types)。
| デプロイの種類 | 処理される場所 | 支払い方 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| Global Standard | Azure のどのリージョンでも | トークン従量課金 | まずはこれ。新モデルが最初に来て、価格が最も安く、使える地域も広い |
| Data Zone Standard | データゾーン内(米国・EU・アジア太平洋) | トークン従量課金 | 処理を特定の地域の範囲に収めたい |
| Standard | 指定した Azure の地域(geography)内 | トークン従量課金 | より狭い範囲で処理したい。使えるモデルは限られる |
| Global / Data Zone / Regional Provisioned | 上と同じ3段階 | 処理能力(PTU)を予約して支払う | 大量の利用が続き、速度を安定させたい |
| Global Batch / Data Zone Batch | Global または データゾーン内 | Global Standard より50%安い | 急がない大量処理(目標24時間以内) |
| Developer | Azure のどのリージョンでも | トークン従量課金 | ファインチューニングしたモデルの評価専用。24時間で自動削除、SLA なし |
公式ドキュメントは、ほとんどの用途では Global Standard から始め、データの所在地や性能の要件があるときだけ他の種類に移るよう勧めています。
データの所在地を気にする場合
どの種類でも、アップロードしたファイルなど保存されるデータはリソースを作った地域に置かれます。変わるのは「処理(推論)される場所」です。日本の東日本リージョン(japaneast)を例にとると、2026年9月24日時点のリージョン別一覧では、Data Zone Standard(アジア太平洋)で gpt-5.4 や gpt-5.6-sol などが使える一方、処理を日本の地域内に限る Standard では gpt-4o や gpt-4.1-mini、埋め込みモデルなど一部に限られています。「処理場所を狭くするほど、使えるモデルが減る」と覚えておきましょう。
料金の考え方
- 従量課金(Standard 系):入力トークン・出力トークンそれぞれに「100万トークンあたり◯ドル」の単価がかかります。同じ文章を繰り返し送るときは、割安な「キャッシュされた入力」の単価が適用される場合があります。
- 長い入力は別料金のことがある:GPT-6 系などは、1回の入力トークン数によって「短いコンテキスト」「長いコンテキスト」の2つの料金区分があると公式に書かれています。
- 予約(Provisioned):処理能力を PTU(プロビジョンドスループットユニット)という単位で確保し、月・年単位の予約などで支払います。
- Batch:Global Standard より50%安く、そのかわり結果は非同期で返ります。
- そのほか:ファインチューニングしたモデルの配置料、検索サービス(Azure AI Search)、ストレージなど、周辺のサービスにも別途料金がかかります。
具体的な単価はモデルと地域とデプロイの種類で変わり、改定も頻繁です。この記事では金額を載せず、2026年9月24日時点のAzure OpenAI の公式料金ページと料金計算ツールで確認することをおすすめします。
始め方:最初の1回を動かすまでの手順
公式クイックスタート(Set up Microsoft Foundry resources)に沿った、ポータルでの流れです。
- Azure のサブスクリプションを用意する:持っていない場合はAzure アカウントの作成ページから作ります。会社で使う場合は、情報システム部門が管理するサブスクリプションを使いましょう。
- 権限を確認する:自分でリソースを作るには、サブスクリプションかリソースグループに対して Foundry Account Owner や Foundry Owner などのロール(権限の役割)が必要です。
- Foundry ポータルでプロジェクトを作る:ai.azure.com にサインインし、「New Foundry」の切り替えがオンになっていることを確認して、Create a new project を選びます。プロジェクト名を入れ、Advanced options でリソースグループと地域を選んで作成します。
- モデルをデプロイする:右上の Discover → 左の Models でモデルを探し(クイックスタートでは
gpt-5-mini)、Deploy → Default settings で追加します。デプロイ名(例:gpt-5-mini)はコードで使うので控えておきます。 - プレイグラウンドで試す:デプロイが終わると Build 画面に移り、そのまま会話を試せます。プレイグラウンドは、コードを書かずにプロンプトやモデルを試す画面です(公式の説明)。
- プロジェクトのエンドポイントを控える:プロジェクトのトップ画面に表示される
https://<リソース名>.services.ai.azure.com/api/projects/<プロジェクト名>の形の URL をコピーします。 - チームに権限を渡す:メンバーには Foundry User ロールを割り当てます。公式には、アプリを作って試すのに必要な最小限の権限と説明されています。
- コードから呼ぶ:次の章のコードで、エンドポイントとデプロイ名を使って呼び出します。
ロール名は最近変更されました(旧 Azure AI User → Foundry User など)。画面によっては旧名が表示されることがありますが、中身は同じです。
Azure CLI で作る場合
同じことをコマンドで行う例です(公式クイックスタートの記載どおり。Azure CLI 2.80.0 以降が必要で、名前や地域は自分の環境に合わせて変えます)。--custom-domain は世界で一意である必要があります。
az group create --name my-foundry-rg --location eastus
az cognitiveservices account create \
--name my-foundry-resource \
--resource-group my-foundry-rg \
--kind AIServices \
--sku S0 \
--location eastus \
--custom-domain my-foundry-resource \
--assign-identity \
--allow-project-management true
az cognitiveservices account project create \
--name my-foundry-resource \
--resource-group my-foundry-rg \
--project-name my-foundry-project \
--location eastus
az cognitiveservices account deployment create \
--name my-foundry-resource \
--resource-group my-foundry-rg \
--deployment-name gpt-5-mini \
--model-name gpt-5-mini \
--model-version "2025-08-07" \
--model-format OpenAI \
--sku-capacity 10 \
--sku-name GlobalStandard
DeploymentModelNotSupported というエラーが出た場合は、そのモデル・バージョン・デプロイの種類が選んだ地域で使えないという意味です。試し終わって不要になったら、リソースグループごと削除すれば中のリソースもまとめて消えます。
なお、プレビュー機能の「instant models(インスタントモデル)」を使うと、デプロイせずにモデル名だけで呼び出せます。2026年9月24日時点では、米国西部3(West US 3)に作ったプロジェクトでのみ使えると案内されています。
コードから呼ぶ:最小のコード例(Python)
公式クイックスタート(Get started with Microsoft Foundry SDK)の Python の例です。筆者の環境では実行していないため、公式の記載をそのまま載せます。
まずパッケージを入れ、Azure CLI でサインインします。コードは、このサインイン情報を使って認証します。
pip install "azure-ai-projects>=2.3.0" azure-identity
az login
次のコードの your_project_endpoint を、前の章で控えたプロジェクトのエンドポイントに置き換えて実行します。model にはデプロイ名を入れます。
from azure.identity import DefaultAzureCredential
from azure.ai.projects import AIProjectClient
# Format: "https://resource_name.services.ai.azure.com/api/projects/project_name"
FOUNDRY_PROJECT_ENDPOINT = "your_project_endpoint"
# Create project and openai clients to call Foundry API
project = AIProjectClient(
endpoint=FOUNDRY_PROJECT_ENDPOINT,
credential=DefaultAzureCredential(),
)
openai = project.get_openai_client()
# Run a responses API call
response = openai.responses.create(
model="gpt-5-mini", # supports all Foundry direct models
input="What is the size of France in square miles?",
)
if not response.output_text or not response.output_text.strip():
raise RuntimeError("Response output text was empty.")
print(f"Response output: {response.output_text}")
ポイントは次の3つです。
- API キーを使っていない:
DefaultAzureCredentialは、手元ではaz loginのサインイン、Azure 上ではマネージドID(アプリ専用の ID)など、その場で使える Microsoft Entra ID の資格情報を自動で選びます。 - OpenAI の SDK と同じ書き方:
project.get_openai_client()で OpenAI 互換のクライアントを取り出し、responses.create(Responses API)で呼びます。 - Azure AI Projects 2.x が前提:公式に、このコードは 1.x とは互換性がないと注意書きがあります。
既存の Azure OpenAI リソースから呼ぶ場合
https://<リソース名>.openai.azure.com 形式のエンドポイントを使う場合は、OpenAI の公式 Python ライブラリをそのまま使えます。以前のように月ごとの api-version を指定する方式ではなく、/openai/v1/ で終わる URL を指定します(公式の SDK 例)。
pip install openai azure-identity
from azure.identity import DefaultAzureCredential, get_bearer_token_provider
from openai import OpenAI
endpoint = "https://YOUR-RESOURCE-NAME.openai.azure.com/openai/v1/"
token_provider = get_bearer_token_provider(
DefaultAzureCredential(), "https://ai.azure.com/.default"
)
openai = OpenAI(base_url=endpoint, api_key=token_provider)
response = openai.responses.create(
model="gpt-5-mini",
input="Explain the purpose of an API in one sentence.",
)
print(response.output_text)
認証は Entra ID がおすすめ
公式ドキュメントは、本番のアプリでは API キーではなく Microsoft Entra ID による認証を勧めています。API キーは1つ漏れると全権限を渡すのと同じになるためです。どうしてもキーを使う場合は、コードに直接書かず、環境変数や Azure Key Vault に置きます。キー認証を無効にする方法やマネージドID の使い方は 共通基盤の記事 を参照してください。
コンテンツフィルター(Guardrails)
Azure で使うモデルには、有害な入力や出力を検知する仕組みが最初から付いています。以前は「コンテンツフィルター」と呼ばれていましたが、現在の公式ドキュメントでは Guardrails(ガードレール)と呼ばれています(Guardrails overview)。
初期状態で何が止まるか
テキストのモデルには、既定で次の設定が適用されます(既定のポリシー)。
| 検知する内容 | 対象 | 既定のしきい値 |
|---|---|---|
| ヘイト・不公平な表現 | 入力と出力 | 中(Medium)以上を止める |
| 暴力 | 入力と出力 | 中以上を止める |
| 性的な表現 | 入力と出力 | 中以上を止める |
| 自傷 | 入力と出力 | 中以上を止める |
| ジェイルブレイク(AI の制限を外そうとする攻撃) | 入力 | — |
| 著作物(テキスト・コード)の出力 | 出力 | — |
しきい値を超える内容が見つかると、リクエストはエラー(HTTP 400、content_filter)になるか、応答の finish_reason が content_filter になります。アプリ側でこの場合の表示(「その内容にはお答えできません」など)を用意しておきましょう。
設定を変えるには
- しきい値は調整できる:Low・Medium・High から選べます。
- 完全にオフにするには申請が必要:Azure が販売するモデルでは、「modified Guardrails」の審査で承認された顧客だけがオフにできます。
- 追加の検知:資料に紛れ込んだ指示でAIを操る攻撃(間接プロンプトインジェクション)、個人情報(プレビュー)、根拠のない回答(Groundedness、プレビュー)なども検知の対象にできます。
- 日本語について:ヘイト・性的・暴力・自傷の分類モデルは、日本語を含む8言語で学習・テストされていると公式に書かれています。それでも、自分のアプリで実際に試して確認することが勧められています。
使いどころ:社内チャット、RAG など
| 使い道 | 具体例 | 向いている構成 |
|---|---|---|
| 社内チャット | 社員向けの ChatGPT のような画面。文章の下書き、要約、翻訳 | Global Standard か Data Zone Standard のチャットモデル+ Entra ID でのサインイン |
| 社内文書 Q&A(RAG) | 規程集やマニュアルを検索して答える | 埋め込みモデル+ Azure AI Search / Foundry IQ |
| 定型業務の自動化 | 問い合わせの分類、議事録の要約、帳票からの項目の抜き出し | チャットモデル+構造化出力(決まった形式で出力させる機能) |
| 大量の一括処理 | 過去のアンケート数万件の分類、商品説明文の一括作成 | Global Batch / Data Zone Batch |
| エージェント | 検索や社内システムの操作を組み合わせて作業を進める | Foundry Agent Service |
RAG:社内の資料をもとに答えさせる
AI は社内の資料を知りません。そこで、質問に関係する資料を先に検索し、その内容を AI に渡して答えさせる仕組みが RAG(検索拡張生成)です。仕組みと最小のサンプルは RAG 入門 で解説しています。
Azure では、Azure AI Search を土台にした Foundry IQ という仕組みで、Blob Storage・SharePoint・OneLake などの資料を「ナレッジベース」にまとめ、エージェントから使えます。公式の説明では、資料のアクセス権(ACL)や Microsoft Purview の秘密度ラベルを反映し、質問した人が見てよい資料だけを回答に使えるとされています。一部の機能はまだプレビューです(What is Foundry IQ?)。
AI に読ませる資料の整え方は 手元のデータを「AIが読めるナレッジ」に変える実践ガイド も参考になります。
始める前のチェックリスト
- 入力してよいデータの区分(公開・社内・機密など)を決めた
- 処理場所の要件に合うデプロイの種類(Global・Data Zone・Standard)を選んだ
- 使いたいモデルが、その地域とデプロイの種類で使えることを確認した
- アプリの認証を Entra ID(マネージドID)にし、API キーをコードに書いていない
- Guardrails で止まったときの表示をアプリに用意した
- 料金ページと料金計算ツールで、想定の利用量での金額を見積もった
ネットワークの閉域化、ログの取得、Azure Policy によるルールの強制など、本番運用に向けた土台づくりは Azure生成AIの安全なデータ管理と共通基盤入門 で順番に説明しています。
まとめ
- 旧「Azure OpenAI Service」は、現在「Azure OpenAI in Foundry Models」と呼ばれ、Microsoft Foundry の Foundry Models の一部になっています。
- Foundry では OpenAI のモデルに加え、DeepSeek・Meta・Mistral・xAI などの「Azure が販売するモデル」や、Claude などのパートナーのモデルも使えます。
- OpenAI の API を直接使う場合も初期状態で学習には使われません。Azure を選ぶ理由は、Azure の契約・Entra ID・ネットワーク・Policy に乗せられることと、処理場所を選べることです。
- デプロイはまず Global Standard から。処理場所の要件があれば Data Zone や Standard、大量処理は Batch、安定性が必要なら Provisioned を選びます。
- 始め方は「サブスクリプション → プロジェクト(Foundry リソース)→ モデルのデプロイ → プレイグラウンド → コード」の順で、認証は Entra ID がおすすめです。
- Guardrails(旧コンテンツフィルター)が既定で有効です。止まったときの動きもアプリで扱いましょう。
参考リンク
- What is Microsoft Foundry?
- Microsoft Foundry Models overview
- Foundry Models sold by Azure(モデル一覧)
- Region availability for Foundry Models sold by Azure
- Deployment types in Microsoft Foundry Models
- Quickstart: Set up Microsoft Foundry resources
- Quickstart: Get started with Microsoft Foundry SDK
- Azure OpenAI SDK language support
- Upgrade Azure OpenAI to Microsoft Foundry
- Data, privacy, and security for Foundry Models sold by Azure
- Guardrails and controls overview
- Azure OpenAI の料金(2026年9月24日確認)
- Azure OpenAI in Foundry Models(製品ページ)
- Data controls in the OpenAI platform(OpenAI)
