確認日:2026年9月24日。DeepSeek の公式 API ドキュメント(api-docs.deepseek.com)と Hugging Face のモデルカードで確認しました。この記事は2025年2月に公開した「DeepSeek V3 完全解説」を、その後の変化を踏まえて全面的に書き直したものです。
はじめに:DeepSeek V3 から1年半で何が変わったか
2024年12月に登場した DeepSeek-V3 は、「トップクラスの性能を、ずっと少ない計算資源で作れた」ことで世界中を驚かせた中国発の AI モデルです。そこから1年半あまりで DeepSeek は何度も新しいモデルを出し、2026年9月の今は V4.1-Flash が主力になっています。
この記事では、これから DeepSeek を試す方に向けて、次のことを順番に説明します。
- DeepSeek-V3 とは何だったのか(なぜ話題になったのか)
- V3 から V4.1 までの流れ
- 今の API の使い方と料金(旧モデル名は使えなくなっています)
- 使う前に知っておきたいデータの扱いと注意点
- 自分のパソコンで動かせるのか
先に結論:2025年の記事で紹介した API のモデル名
deepseek-chatとdeepseek-reasonerは、2026年7月24日に廃止されました。今はdeepseek-flashを指定します。
DeepSeek とは
DeepSeek(ディープシーク)は、中国・杭州の AI 企業です。モデルの中身(重み)を公開する「オープンウェイト」の方針をとっていて、誰でもダウンロードして自分のサーバーで動かせます。公式のチャットアプリと、開発者向けの API も提供しています。
特徴は、性能のわりに料金がとても安いことです。後で紹介するとおり、API の料金は Claude や GPT の上位モデルと比べて大幅に安く設定されています。
DeepSeek-V3 とは何だったのか
DeepSeek-V3 は2024年12月26日に公開されました。公式の技術レポートとモデルカードによると、主な特徴は次のとおりです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| パラメータ数 | 総数6710億(671B)、1回の処理で動くのは370億(37B) |
| 仕組み | MoE(Mixture of Experts):たくさんの「専門家」の中から、必要な一部だけを使う |
| 主な工夫 | MLA(記憶を圧縮する注意機構)、複数トークン先の予測(MTP)、FP8 という軽い数値形式での学習 |
| 学習に使ったデータ | 14.8兆トークン |
| 学習にかかった計算量 | H800 GPU で合計278.8万時間 |
| 一度に読める長さ | 128K トークン |
| ライセンス | コードは MIT、モデルは独自ライセンス(商用利用可) |
話題になった理由は、学習にかかった計算量の少なさです。当時のトップクラスのモデルと肩を並べる性能を、公表された数字の上ではかなり少ない GPU 時間で実現しました。MoE は「巨大だけれど、毎回は一部しか動かさない」仕組みなので、動かすときの費用も抑えられます。
ただし、ここでの数字は最終的な学習にかかった分で、研究開発や試行錯誤の費用は含まれていない点に注意が必要です。
V3 から V4.1 までの流れ
| 時期 | モデル | 主な変化 |
|---|---|---|
| 2024年12月 | V3 | 上で紹介した最初のモデル |
| 2025年1月 | R1 | 答える前にじっくり考える「推論モデル」。MIT ライセンスで公開 |
| 2025年3〜5月 | V3-0324 / R1-0528 | 推論・コード・数学の性能を改善 |
| 2025年8月 | V3.1 | 「考えるモード」と「すぐ答えるモード」を1つのモデルで切り替え |
| 2025年9月 | V3.2-Exp | 長い文章を効率よく読む新しい仕組み(DSA)を試験導入 |
| 2025年12月 | V3.2 | 道具(ツール)を使いながら考えられるように |
| 2026年4月 | V4-Pro / V4-Flash | 一度に読める長さが100万トークンに |
| 2026年8月 | V4-Pro 正式版 | 考える深さを3段階で指定可能に。時間帯別の料金を導入 |
| 2026年9月 | V4.1-Flash | 画像も扱えるように。API 料金を値下げ |
今の主力:V4.1-Flash
2026年9月10日に公開された V4.1-Flash が、今の DeepSeek の主力です。公式モデルカードによると、次のような特徴があります。
- 一度に読める長さは最大100万トークン。文章と画像の両方を扱える
- MoE の仕組みはそのままで、1回の処理で動くのは全体のごく一部
- 考える深さを細かく指定できる
- 重みを含めて MIT ライセンスで公開
DeepSeek は上位版の V4-Pro を段階的に終了すると発表していて、2026年9月14日からは deepseek-v4-pro を指定しても V4.1-Flash で処理されます(次の上位版 V4.1-Pro が出るまで)。
API の使い方と料金
モデル名
| 指定する名前 | 中身 | 備考 |
|---|---|---|
deepseek-flash | V4.1-Flash | これを使うのが基本 |
deepseek-v4-pro | V4-Pro(段階的に終了) | 2026年9月14日から V4.1-Flash で処理 |
deepseek-chat / deepseek-reasoner | ― | 2026年7月24日に廃止 |
料金(100万トークンあたり、米ドル)
DeepSeek は時間帯で料金が変わります。混み合う時間帯(ピーク)は平日の日本時間10〜13時と15〜19時で、それ以外(夜間・週末・中国の祝日)は半額です。
| ピーク | それ以外(半額) | |
|---|---|---|
| 入力(キャッシュあり) | 0.006ドル | 0.003ドル |
| 入力(キャッシュなし) | 0.3ドル | 0.15ドル |
| 出力 | 1.2ドル | 0.6ドル |
deepseek-flash の料金です(公式の料金ページ、2026年9月24日時点)。「キャッシュあり」は、前と同じ文章を送ったときに割り引かれる料金です。
呼び出してみる
DeepSeek Platform で API キーを作り、環境変数 DEEPSEEK_API_KEY に設定してから、次のコマンドを実行します。OpenAI の API と同じ形式なので、OpenAI 用のライブラリもそのまま使えます。
curl https://api.deepseek.com/chat/completions \
-H "Content-Type: application/json" \
-H "Authorization: Bearer ${DEEPSEEK_API_KEY}" \
-d '{
"model": "deepseek-flash",
"messages": [
{"role": "user", "content": "MoEとは何か、中学生にもわかるように説明して"}
],
"thinking": {"type": "enabled"},
"reasoning_effort": "high"
}'
thinking で「考えるモード」のオン・オフを、reasoning_effort で考える深さ(low・high・max)を指定します。何も指定しなければ、考えるモードがオンで深さは high です。
Anthropic 形式でも呼び出せる
DeepSeek は Anthropic(Claude)の API 形式にも対応していて、接続先を https://api.deepseek.com/anthropic にすると、Claude 用のライブラリや道具から DeepSeek を呼び出せます。公式ドキュメントには Claude Code と組み合わせる手順も載っています。
このとき、Claude のモデル名は自動で置き換えられます。claude-opus で始まる名前は deepseek-v4-pro に、claude-sonnet と claude-haiku で始まる名前は deepseek-flash になります。ただし MCP ツールなど、一部の機能には対応していません。Claude Code そのものの使い方は Claude Code 入門 を参考にしてください。
使う前に知っておきたい注意点
データの保存先
DeepSeek の公式プライバシーポリシー(2026年2月10日更新)には、アプリや Web サービスで集めた情報を中華人民共和国にあるサーバーに保存すると書かれています。
日本では2025年2月3日に個人情報保護委員会が、DeepSeek を使うときの注意を呼びかけました(個人情報保護委員会の注意喚起)。同じ月にデジタル庁も各省庁に業務利用の注意を通知しています。ほかにも、イタリアでのアプリの遮断、韓国でのダウンロード停止、米国の一部政府機関での利用禁止などが報じられました。
安全に使うためのポイント
- 公式アプリやチャットに、個人情報や会社の機密情報を入力しない
- 会社で使うときは、社内の利用ルールを先に確認する
- 機密を扱いたい場合は、公開されている重みを自社の環境で動かすか、大手クラウドの提供版(Microsoft Foundry の V4-Pro など)を検討する
なお、AWS Bedrock と Google Cloud Vertex AI で提供されているのは V3.2 以前のモデルです(2026年9月時点の公式ドキュメント)。
自分のパソコンで動かせる?
V3 や V4 系の本体は、総パラメータが数千億を超える巨大なモデルです。公式の手順は複数の GPU を積んだサーバーを前提にしていて、一般的なパソコンでそのまま動かすのは現実的ではありません。
手元で試すなら、R1 の「蒸留モデル」が選択肢になります。これは R1 の考え方を、ずっと小さいモデル(15億〜700億パラメータ)に覚えさせたものです。Ollama や LM Studio などのツールを使えば、コマンド1つで動かせます。
ollama run deepseek-r1:8b
最新の V4.1-Flash は、Ollama ではクラウド実行のみの提供です。ローカルで AI を動かす基本は LM Studio で AI を Mac で動かす完全ガイド、モデルを小さくする仕組みは LLM の「量子化」とは で解説しています。オープンウェイトのモデルを実際に Mac で動かした検証は MiMo-V2.6 を Mac で動かして検証 もどうぞ。
性能の目安
公式モデルカードには、V4.1-Flash のベンチマーク結果が載っています(考える深さを最大にした場合)。
| テスト | 内容 | V4.1-Flash |
|---|---|---|
| Terminal-Bench 2.1 | ターミナル操作を伴う作業 | 90.6 |
| GPQA Diamond | 大学院レベルの科学の問題 | 90.9 |
| Codeforces | 競技プログラミング(レーティング) | 3471 |
ベンチマークは開発元が自分で測った数字です。実際の使い心地は用途によって変わるので、自分の作業で試して判断するのがおすすめです。
まとめ
- DeepSeek-V3(2024年12月)は、少ない計算資源で高い性能を出したことで注目されたオープンウェイトのモデルです。
- その後 R1、V3.1、V3.2、V4 と進化し、2026年9月の主力は V4.1-Flash です。
- API のモデル名は
deepseek-flash。旧名のdeepseek-chatは2026年7月に廃止されました。 - 料金は非常に安く、夜間・週末はさらに半額です。
- 公式サービスのデータは中国のサーバーに保存されるため、機密情報は入力しないようにしましょう。
ほかのオープンウェイトの大型モデルの動向は、Kimi K3 技術レポートを読み解く でも紹介しています。

